2010年 08月 14日 ( 7 )

って何で高知まで来てNHKのアニソン特集見てるんだろうか。


というわけでエンジェルカップ四日目でした。
まあ主役はジョーカーですよ。

まだまだ折り返しにも来ていないエンジェルカップですが、
割と忙しくも楽しくやらせてもらってます。


さ、明日は土産物の日本酒を買い込んで松山へ。
大河見てないさかもっさんより、秋山兄弟の方が目的だったり。

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by right-o | 2010-08-14 21:07 | その他
「わぁ!派手ですね!」
 入場ゲートの上から低音の火花が雨のように降り注ぐ中、
 演出に負けない華やかさを振りまきながら、小縞聡美が姿を現した。
 ポニーテールを揺らして花道を下りつつ、周囲の観客たちと笑顔でハイタッチ。
 リングに入ると、青コーナーに立って客席へ大きく投げキッス。
 小縞は天性の明るさで、TNAアサイラムの観客を一気に惹きつけた。
『……ウチに欲し』
『流石、闘京女子の選手はアピールが上手ですね』
 思わず社長としての本音が出かけた霧子に、小川はすかさずフォローに入る。
『……コホン。さあ迎えたメインイベント、対するTNAも一番華のあるレスラーが登場します!!』
 一気に照明が暗くなり、スクリーンには「09:00」秒から始まるカウントダウンが表示される。
 これがゼロになると同時に、薄い照明の中で鏡の入場が始まる。
 銀色の流れを身にまとった鏡は、たまたま最前列に座った観客が息を呑むほどの存在感を放ちながら、
 不遜な表情でリングへ向かう。
 やや時間をかけてロープをくぐると、自然な動作で髪を後ろに梳き流し、小縞を見下ろした。
 こうして、二つの異なる華やかさがリングの上で相対した。


 事前に相手の試合を見て研究する、などという勤勉さとは無縁の鏡は、
 自分より頭一つ小さい小縞を見て迷わず力押しを選択した。
 が、手四つに組み合った小縞はビクともしない。
「このくらいっ!」
「くっ!?」
 どころか、組んだままの鏡の両手を下から捻り上げて踵を浮かせた。
 ただ身長が高いだけで特別腕力に優れるわけではない鏡など、生粋のパワーファイターの敵ではない。
 すかさず鏡はトーキックを蹴り込んで手を放させ、小縞をヘッドロックに捕らえたが、
「……んっ!」
 小縞は一息にバックドロップで切って落とした。
 序盤、まずは当ての外れた鏡が劣勢に回る。

 中盤、小縞のラリアットをカウンターのジャンピングニーパッドで迎撃してからペースが鏡に移った。
「立ちなさい」
 ニーリフトを入れつつ小縞を引き起こした鏡は、ブレーンバスターの体勢。
 危うく逆に投げ返されそうになったところで、更にニーリフトを入れてなんとか持ち上げた。
 そこから前進しつつ、小縞を後ろではなく前に投げ出すようにし、足をトップロープに引っ掛ける。
「ハッ!」
 そのままの体勢から、宙ぶらりんの小縞へ落差をつけだDDT。
 すぐに裏返して両肩を押さえたが、これは小縞が2.5で肩を上げた。
「ふん……」
 まだ余裕のある返し方に、鏡はやや苛立った様子で小縞の右手首を取って再度引き起こしにかかる。
 その右手を持ったまま自分の体を回転させて捻りを加え、思い切り引っ張る。
 と同時に右腕を振り抜いてのショートレンジ・ラリアット。
 しかし、鏡の腕は見事に空を切った。
「!?」
 鏡が振り向いた瞬間、ラリアットを楽々と掻い潜った小縞が鏡の首に飛びつき、
 相手の虚を突いた抜群のタイミングでダイヤモンドカッター。
 ダウンした鏡を見下ろし、小縞は必殺技を宣言した。
「ファイナルオーダー、入ります!!」
 鏡の長身を軽々と両肩に担ぎ上げ、デスバレーボムで垂直に――落とされる寸前、
 息を吹き返した鏡は、もがいて小縞のバランスを崩し、その後ろに着地。
 同時に背中を突き飛ばしてやや距離を取った。
「往生際が悪いですよ!!」
 その距離を瞬時に詰めてラリアットに来た小縞に対し、
 鏡は深く身を沈めて懐に入り込み、下からその体を持ち上げた。
 そこから体を半回転させて後ろを向きつつ、小縞の両足を引いて勢いをつける。
 マットを揺らして豪快なスパインバスターを炸裂させた。
「ふぅ……」
 大の字の小縞を膝立ちで見下ろす鏡は、細く息を吐き出した。
 小縞の体へ覆いかぶさるようにマットへ両手をつき、下から舐めるように視線を這わせる。
 ゆっくりと小縞の上半身へ体を移すと、小縞の下に左足を滑りこませて両手を封じ、
 右足をその首にかける。
 最後に抱きしめるようにして首に両手を回し、少しずつ力を込めていく。
 ここからたっぷり二分をかけて、鏡は小縞を絞め落とした。

 ○フレイア鏡 (9分44秒 蜘蛛絡み) 小縞聡美×


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by right-o | 2010-08-14 19:29
 コーナーからのセントーン・アトミコを盛大に自爆したあと、ジョーカーは暫し我慢の時間を強いられた。
「真琴さん!」
 近藤の手に飛びついた美月は、ほぼ無傷のパートナーに試合を託す。
「よし……!」
 近藤は自爆から立ちあがったジョーカーをミドルキック一発で蹴り倒し、
 さらに倒れたジョーカーの首根っこを掴んで強引に引き起こした。
「うおっ……!?」
 長身を生かした見事なチョークスラム。
 意外な純プロレス技に不意を突かれたジョーカーは、思い切りマットに叩きつけられてしまった。
 仰け反って痛がるジョーカーを近藤が片エビに押さえ込んだが、これは真帆がカット。
「邪魔です!」
 が、ここでさらに美月が入り、飛びついてのヘッドシザースホイップで真帆を投げ捨て、
 それ以上の介入を許さない。
 これで終わらず、美月は近藤と一緒になってジョーカーの足を両側から刈り、尻餅をつかせた。
 そして二人同時にロープへ走り、正面からのサッカーボールキック。
「かはッ!」
 悶絶したジョーカーを再度近藤が押さえ込むも、これは何とか自力でクリア。
 無理をしてすぐに立ちあがったジョーカーは、
 思わずふらついたという体で真帆が転がり出た方のロープへ向かう。
「真帆!」
 さらに追撃しようと近藤と美月が寄って来たところで、ジョーカーは突然身を屈めた。
「おうっ!」
 突如エプロンに踊り上がった真帆は、そのままトップロープを掴んで飛び越える。
 二人まとめてショルダータックルで薙ぎ倒し、どうにか攻守を入れ替えた。

(ふぅ)
 試合を真帆に任せ、ジョーカーはコーナーに座り込んで一息吐いた。
(さて、どうしようか)
 漠然と考えていた作戦として、まず狙いは美月の方。
 明らかに司令塔であることと、対越後・永原組との試合を見る限りかなりの研究家と思える。
 ここが逆に付け入るスキではないかと考えた。
 想定外の動きを仕掛けることで、美月の、ひいてはタッグ全体のペースを崩すことができるはずだった。
 しかし今までのところ、美月は最初の奇襲に動じることなく試合をつくり、
 次の手を打つ前にこちらが防戦に回ってしまっている。
 ただ、ジョーカーは当初の方針を曲げるつもりは無かった。
「うおっ」
 そうこうしている間にも、リング上では試合が動いている。
 フライングボディアタックを見事に外した真帆の右足首を取り、美月が必殺のアンクルホールドへ。
 が、真帆は反射的に左足をついて不自然な形で立ちあがった。
(中森に散々やられた技だからな)
 真帆でも痛い目に遭ったことは学習するらしく、
「うぐぐ……」
 右足を取られたままの片足立ちで、真帆は前につんのめるのように右手を伸ばす。
 それに対し、ジョーカーもコーナーから精一杯手を伸ばし、ついに指先が触れた。
「よしっ」
 タッチ成立の宣言を待たずコーナーに飛び乗り、美月へミサイルキック。
「真帆!」
「おう!」
 真帆に近藤を封じさせ、美月と一対一の場をつくる。
 ここで勝負をかけるつもりだった。
 とはいえ、もちろん美月も動いてくる。
 立ちあがり際に低いタックルで懐に入られ、今度はジョーカーの方が意表を突かれた。
「う……!?」
 必死で体重を前にかけて倒されるのを防ぐと、美月はそのまま流れるようにバックを取る。
 意外なアマレス技術に驚きながらも、ジョーカーは自分の腰に回った両手を見て咄嗟に閃いた。
「せっ!!」
 美月がジャーマンを仕掛けると同時に自分からジャンプし、バック宙しつつ華麗に着地――するところを、
「……!?」
 着地と同時に、ジョーカーは足を畳んだまま右に傾いて倒れた。
 足首を押さえて苦悶の表情でのたうち回ると、近づいて様子を見ていたレフェリーがタイムキーパー席を向く。
(おっと)
 ここで試合を止められては元も子も無い。
「待て!やらせてくれ……!!」
 レフェリーのシャツにすがりつきながら必死の懇願。
 場内が騒がしくなり、真帆と近藤も場外乱闘の手を止め、リングの上を見ている。
 迫真の演技と言えたが、何よりタイミングが良かった。
 美月は、困り切ってしまったレフェリーとジョーカーのやり取りをぼうっと見ていた。
 もしかしたら、ジャーマンには美月なりの思い入れがあったのかも知れない。
 とにかく目の前の状況を信じてしまった美月につけ込んだジョーカーは、
 左足一本でどうにか立ちあがった体を作りながら、突然右足を思い切り伸ばして美月の顎を蹴りあげた。
「お前ッ!!」
「真帆押さえてろ!」
 いち早く状況を理解した近藤が激昂するのを、あまり状況を理解していない真帆がしがみついて押さえる。
 ジョーカーはゆっくりと美月を引き起こし、その首を肩の上に固定すると、
 手近なニュートラルコーナーを一気に駆け上がった。


 ○ジョーカーレディ                                杉浦美月×
  フォクシー真帆 (18分59秒 ジョーカーアタックNo2→体固め) 近藤真琴

 ホームグラウンドで容赦無いブーイングを浴びながら、
 ジョーカーと真帆は恐ろしい目で睨みつけている近藤に手を振りながらリングを後にした。
(ひょっとして知名度の低さが役立った、のか?)
 美月のリサーチ外にあったような気がする自分達の知名度を考えると、何だか素直に喜べない気もするジョーカーであった

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by right-o | 2010-08-14 19:17 | 書き物
「……よし」
 リング上の中森が機械的に右手を掲げて見せていた頃、
 ようやくジョーカーは真帆の腹から頭を持ち上げた。
「出番だぞ真帆。そろそろ起きろ」
 そう言って今まで頭を置いていた場所に平手を叩きつけると、
 真帆の寝息もようやく止まり、最後に大きな欠伸をしてから一気に跳ね起きた。
「おうっ、やるぞっ!」
「それで何か作戦でも?」
 小川の質問にジョーカーが答える。
「まあ、頭の方を狙うことだな」
 大会四日目にして初の出番を迎えたジョーカー達には、
 先に他の四組の試合を観戦できるアドバンテージがあった。
 加えて初戦の近藤&美月組はリーグ戦以外にも一試合こなしている。
 このことから、ジョーカーはこの試合における狙いをある一点に絞ることができた。


 いつも通りの入場からエプロンに上がったジョーカーと真帆は、
 二人同時にトップロープを飛び越えた。
 真帆はロープを掴んでひとっ飛び、ジョーカーはロープに触らず前傾しながら飛び越え、
 体を丸めて背中で着地しつつ転がった勢いで起きる。
 対戦相手と向かい合った二人に送られる声援はそれほど熱を帯びず、
 近藤&美月に向けられるのと大して変わらない。
 会場の立地からして比較的一見の客が多いのもあるが、
 固定客も内輪対外敵というシチュエーションを特別視していないのである。
 そういう意味では、会場の興味はむしろ初めて見る近藤と美月の方に集まっていた。

「先に行かせてもらうぞ」
 飛び出しかけた真帆を抑えてジョーカーが先発を買って出た。
 これに対するは近藤真琴。
 両者まずはにらみ合ったままリングの中央をぐるりと半周したところで、
 ジョーカーはいきなり近藤に背を向けた。
「ボーっとしてるんじゃない!」
 コーナーに控えていた美月を肘で場外に叩き落し、挑発する。
 この不意打ちに、美月は驚き、近藤は激高した。
「お前っ!」
 強烈なローキックがジョーカーの足を薙ぎ、
 倒されたジョーカーはたまらずサードロープをくぐってリングから転がり出たが、
 場外から近藤を見上げて睨むかと思えば、また方向転換して美月に飛び掛っていく。
「お前の相手は私だろ!」
 たまらず近藤が場外に下りると、ついでに真帆まで飛んできてすわ場外乱闘かという雰囲気になったが、
 ジョーカーは自分だけさっさとリングに上がってしまった。
「なんなんだよ……」
 そして戻って来た真帆とタッチしてコーナーに控える。
 真帆にもパートナーの意図はわからなかったが、別にわかろうとする気も無いので気にならない。

 真帆対近藤の段になって、ようやく試合は噛み合い始めた。
 エルボーの打ち合いからヘッドバットの打ち合いへ続き、これを制した真帆がロープへ飛んだところで、
 身を屈めた近藤がカウンターのバックフリップを決めて見せる。
「真琴さん、足を!」
「おうっ」
 立ち上がりかけたところで、近藤の足が鞭のようにしなった。
「痛っ」
 これほど本格的なローキックをくらった経験は真帆に無い。
 思わず怯んだところに2発、3発と続けざまに決まり、流石にジョーカーも身を乗り出した。
 しかし4度目は空を切り、近藤が蹴りつけるはずの真帆の足は自分の顔の高さにあった。
「とうっ」
 真帆はその場飛びのドロップキックで見事にカウンターを取ったが、
 足へのダメージからかすぐには立てずにいる。
 その間、近藤は不意を突かれながらも自軍コーナーに帰ることができた。
「逃がすな!」
「わかってます」
 ここで真帆を逃す手は無い。
 代わった美月は真帆の足を取ろうと試みたが、既に立ち上がりかけていた真帆の腕が降ってきた。
「くっ」
 やむなく足を放してローキックに切り替えたが、美月の脚力では近藤ほどのダメージは与えられない。
 ここで美月が走り込んでの低空ドロップキックでも狙ったか、ロープへ飛ぶ。
 ロープに体重を預けきった瞬間を狙い済ましたように、その背中をジョーカーが外から蹴りつけた。
「っ!?」
 驚く間もなく、今度は正面から真帆の両手に首根っこを掴まれ、美月は空中に放り出される。
 首を掴んでのフロントスープレックスで美月を退けた真帆は、
 さらにこれを引き起こし、ロープを隔てたジョーカーの前に乱暴なボディスラムで叩きつけ、タッチ。
「よっ」
 ジョーカーは入場時と同じ要領でエプロンからロープを飛び越えると、マットではなく美月の上に背中から着地。
 さらに引き起こしてニュートラルコーナーに振った。
「いくぞッ!」
 走り込んで両膝を突き出すようにしてジャンプし、コーナーを背にした美月に突き刺す。
 反動で前のめりになった美月をブレーンバスターの体勢に補足し、
 やや後ろに下がってコーナーと平行になるよう低く投げ捨てた。
「美月っ!」
 身を乗り出して右手を差し出す近藤を一瞥してからコーナーに飛び乗り、リングを向き直って立ち上がる。
「ほら、どうしたッ!?」
 完全に余裕をかましていたジョーカーは、先ほどエプロンから飛んだのと同じ要領でコーナーから飛んだ。
 ふわりと美しいフォームで肩と背中から着地したが、そこには既に誰も横たわってはいなかった。

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by right-o | 2010-08-14 19:03 | 書き物
 TNA組にとっては使い慣れたロッカールーム。
 しかし普段の何倍もの人数が集まった今日は、一部屋当たりの人口密度が増加している。
 その床にマットを敷いて、ジョーカーと真帆がTの字になって寝ていた。
「zzz……」
 仰向けになって寝息をたてる真帆の、上下するお腹の上に頭を乗せて、ジョーカーは静かに目を閉じている。
「あなた達……普段は控室が違うから知らなかったけど……」
「試合がある時の方がぐだぐだしてますよね……」
 鏡と、休憩に来ていた小川は呆れかえってしまった。
 度外れた自信家の鏡でさえ、試合前のウォームアップぐらいはするのだ。
「ふん、試合の前から体力を使ってどうするんだ」
 器用に片目を開けて言い返したジョーカーの前を、青い長髪が横切った。
 ジョーカーと違って完璧な準備運動をこなしたあとも、中森は汗一つかいていない。
 控室を出る中森の様子は、試合に行く時も手洗いに立つ時も変わらないようだった。


「はっ!」
 ロープを軽やかに飛び越えてリングインした小早川は、赤コーナーの上で両手を広げて客席にアピール。
 自分以上の歓声を受ける小早川を、中森は冷めた目で見つめいている。
 小早川はここまで一勝一分け、対して中森は一勝二敗。
 三日目に自分よりかなり大型の朝比奈を破っている分も合わせ、小早川の方が流れに乗っていると言えた。
 とはいえ、たとえ何連勝したところで「流れに乗る」などという表現と中森とは無縁だったが。

 ゴングと同時に突っ込んで来た小早川の脇をすり抜け、中森は素早くバックを取る。
「おっ!?」
 と同時に小早川を真上に持ち上げて仰向けに倒し、グラウンドへ。
 小早川の背中で半回転すると、倒れたままの状態でフロントネックロックに捕らえた。
 なんとか立ち上がろうともがくところを、うまく体重を前に預けて動きを封じる。
 このままの状態が数十秒続いた。
「ふんっぬ……!!」
 どうにか小早川は中森の圧力を跳ね除けようとしたが、
 その立ち上がりかけたところへ、腹部に膝が突き刺さる。
 思わず体を曲げて怯んだ小早川に対し、中森はロープへ飛んだ。
「……うりゃあああッ!!」
 しかし、弾丸のように飛び出した小早川のフライングショルダータックルが、
 ロープの反動を受けた中森を吹き飛ばした。
 その瞬間、退屈していた客席も一気の盛り上がりを見せる。
 文字通り試合が一気に動き始めた中で、小早川の勢いが再燃した。

 静と動のターンがはっきり分かれた試合は、双方ダメージの上では拮抗したまま十分を過ぎた。
「うおおおッ!!」
 コーナーに振った中森に対し、走り込んだ小早川の串刺しエルボーが決まる。
 そのまま対角線に振ると、小早川は一気に体を弾ませた。
 走りながらマットに手をついての見事な側転から、勢いそのままに側面から中森へ突っ込む。
「ぐっ……」
 体重の乗ったスペースローリングエルボーに、流石の中森も表情が歪み、腰が落ちた。
「よしっ!」
 勝負どころと見た小早川は、素早くエプロンに出て中森の背後にあるニュートラルコーナーに飛び乗った。
 中森の後頭部に右膝を添えると、そのまま全体重を前へ。
 必殺のカーフブランディングを狙ったが、中森は自ら頭を下げつつ背中の小早川を前に投げ出す。
「わっ!?」
 左足一本で着地した小早川の右足へ、カーフブランディングを切り返してのアンクルロック。
 これで完全に攻守交替かと思われたが、
「負けるかぁッ!!」
 残った左足で素早くマットを蹴ると、掴まれた右足を軸に半回転し、左の踵で中森のこめかみを蹴った。
「ぐぁっ……!」
 たまらず中森は手を放し、小早川はすぐさま立ち上がる。
 再度、試合は振り出しに戻った。
 が、ここで中森が意外にもエルボーで突っ掛ける。
 驚きながらも、望むところとばかりに小早川もエルボーを返し、打ち合いへ。
 二回りは体格で劣る小早川は、それでも全く引かないどころか、次第に押し始める。
 中森の試合としてはかなり珍しい展開に、会場も一気の盛り上がりを見せた。
「これでッ!!」
 ふらついた中森に対し、小早川は押し切るつもりで体ごと右肘を叩きつけた。
 が、これは空を切る。
 小早川の右肘をかいくぐってその下に頭を突っ込んだ中森は、右腕を小早川の左肩にかけ、
 左腕で右足をすくって思い切り反り投げた。
 初めからこの瞬間、エルボーにカウンターを取るタイミングを待っていたのだ。
 かなり角度をつけたエクスプロイダーで頭から叩きつけられたが、
 それでも小早川は、投げた中森よりも早く立ち上がった。
(よくやる……!)
 意地というか本能というか、考えるよりも早く立った小早川に体がついていかない。
 思わず中森に覆いかぶさるようにふらついた小早川へ、中森は再度エクスプロイダーの体勢から、
 左腕を右の太腿に通して相手の右手首を掴む。
 さきほど以上の角度をつけて投げ切り、小早川の意地を断ち切った。

 ○中森あずみ(12分14秒 リストクラッチ式エクスプロイダー→片エビ固め)小早川志保×


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by right-o | 2010-08-14 18:44 | 書き物
『こんばんは!今宵もTNAの番組にようこそ!!
 本日も実況は私、井上霧子と、解説には特別に小川ひかるさんに来ていただいてます!!』
『こんばんは』
『さて今夜の番組は特別編、
 いくつもの団体を跨ぐイベントであるエンジェルカップの一環として行われるわけですが……』
 屋内会場でありながら、大小のド派手な花火が鳴り響いたあと、
 TNA主催の四日目は普段と同じ霧子の実況で幕を開けた。
 ちなみに、番組内の扱いとしては実況の霧子だが、
 実はこの団体の社長というのはファンの間で周知の事実である。
(キャラ作ってるのよね……)
 試合が無いということで解説役に呼ばれた小川は、
 普段より倍のテンションで喋り続ける霧子を今更ながら珍しそうに眺めていた。
 小川の知る限り、この実況が入った放送はどこにもライブでは流れていない。
 プロレス専門チャンネルとDVD、それに後でネット配信されるのみである。
 とはいえ、今回は他団体と合同のイベントなので、
 ひょっとしたら他の媒体にも流れている可能性はあった。

 霧子の話終わりに被せるように、マスクド・ミスティの華やかな入場曲がかかり、
 同時に入場ゲート上の大型ビジョンに選手紹介の映像が流れ始める。
 この手の映像を持っていない選手のものは、
 恐らくこれまで行われた試合を元に急造するのだろう。
 無駄に整った設備に映える華やかさで入場したミスティがリング上で優雅に一礼すると、
 今度はパンク調の曲に変わってソフィア・リチャーズの入場。
 派手な衣装に不機嫌顔でゆるやかなランプを下るソフィアだったが、
 突然その左右で花火が吹き上がった。
「ちょ……ッ!?聞いてないわよ!!」
 驚いて尻餅をついてしまったソフィアを見て、実況しながら霧子の口の端が曲がる。
(この人の仕業か)
 他の団体の社長に負けず劣らずクセのある女社長の隣で、小川は小さくため息をついた。
『ところで毎回思うんですけど、この花火って消防法とか……』
 派手だが、ある事情からわざと壊れやすく作っている実況机の下で、
 霧子が小川の足をつねってきた。


 会場の半数近くが一見客という話もあるTNAアサイラムでは、
 見た目からして分かりやすいミスティとソフィアはむしろあっさりと受け入れられた。
 ミスティが過剰ともいえるアピールを行い、それを見たソフィアが苛立つ度に、
 観客は声援と笑い声を惜しまず提供してくれる。
 が、数分を過ぎて本格的な試合になってくると、ややソフィアが優勢になったせいで、
 ミスティが関節技に長く捕まる展開となった。
『ソフィアはこれで自分のペースに持ち込もうと……えっ?』
 霧子が、実況しながら小川に向かってしきりとリングを指している。
(か、介入しろと!?)
 霧子は、試合内容の好みが非常に偏っている。
 それは様々な理由からだが、とにかく関節技が長く決まるような試合ははっきりと嫌っていた。
『はあ……』
 わざとマイクに拾わせるように大きなため息を残し、小川は仕方なく実況席を立った。
 入場ゲート前のステージから、わざと目立つように花道を下ってリングへ向かう。
 すると、リング上のソフィアが目ざとく見つけてくれた。
「アンタ!初日に卑怯な手であたしに勝っただけじゃなく、自分と関係無い試合まで妨害しようっての!?」
 前半には言い返してやりたかったが、後半部分に関しては何も言えなかったので、
 小川はただ無言でソフィアに向かって手を振った。
 と、完全に注意を逸らしたソフィアに対し、ミスティは背後から腕を股の間に通してひっくり返し、
 スクールボーイで丸め込んでそのままあっさりと3カウント。
「もうっ!ちょっと!!なんでよぉっ!!!」
 マットの上で手足をジタバタさせて悔しがるソフィアを見て、小川は内心流石に心苦しかった。
 その様子を
『小川さん、完全にソフィアをオモチャにして遊んでいるようですね!』
 などと、介入を命じた本人はしれっと実況しているのであった。

 ×ソフィア・リチャーズ(5分23秒 スクールボーイ)マスクド・ミスティ○


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by right-o | 2010-08-14 13:54 | 書き物
(よくわからん)
 並べられたばかりの折り畳イスにふんぞり返りながら、
 ジョーカーは段々と会場が作られていく風景を眺めていた。
 外面ほど裕福ではないこの団体は、それでも裏方の部分を選手が手伝うようなことは絶対に無い。
 試合以外の部分でレスラーを煩わせる事柄は、霧子がさせないのである。
 その他久しぶりでホームに帰ってきた真帆が真っ先に駆け込んだケータリング等、
 待遇は非常に良いと言える。
(まあその分ギャラは並だが)
 そんなことを考えながら、ジョーカーは人波の中で周囲に忙しく指示を与えつつ、
 人一倍忙しく立ち回ってる霧子を注視していた。
(何を考えているのか……)
 団体の全てを一から、ほぼ一人で作り上げた女社長の、ここは全てであった。
 他の団体とは一線を画して見えるTNAは、彼女の理想をそのまま形にしたものである。
 それがこれからどこへ向かうのか、他団体との交流をほとんどしなかったTNAが、
 どういう風の吹き回しか勇んで参加を決めた今回のリーグ戦に、何か鍵があるような気がした。
「……おや」
 と、入口から聞こえてきた華やかな笑い声に、ジョーカーは思わず微笑した。
 まだ観客が入ってくる時間では無い。
 ということは参加者だが、試合前に周囲のアトラクションでひと遊びしてきたのだろうか。
「ウチ以外にも、大物はいるものだな」
 そう漏らすと、ジョーカーは静かにバックステージへ消えた。
 
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by right-o | 2010-08-14 11:18 | 書き物