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今日は一日中テレビのチャンネルが動きませんでした。
WOWOWのマイケル・ジョーダン特集から。

リアルタイムで見てたのは多分、後期スリービートの最後2シーズンぐらいだったかな。
あとは3度目に復帰してから。
いやー、キャリア通してみると本当凄い。


そんなことよりweb拍手お返事 まあやってみますのでありがとうございます。

>何とかする、それが信用できない状態なんですけど……。助っ人より「海外武者修行に行かせる。そこでライバルを作り、一緒に切磋琢磨して帰国、ライバルもそれを追ってくる」とかのほうが見せ場も多くていいと思います。

正直に言ってしまえば、相羽にそこまでしてやるほど思い入れが無いんですよ。
いや、思い入れが無いというか、そういう舞台を用意しても頭の中で動かせないというか。

まあ最近までの台詞も動きも無いのは流石に出してる意味ないだろと思うので、
話の中での強さ底上げも含めて対処はしますが、
間違ってもこの先相羽が独自にライバルを作るようなことにはなりません。


>よーし、論議に乗っかっちゃうぜー。個人的に相羽は話を「描き」易いんですよね。挫折姿も、落ち込む姿も、番狂わせ的な勝利も。その点ボクは美月は「描き」難かったので、ここの「美月スタイルズ」があって初めて動かせるようになりました。うん、ただの感想でした。(カレーマン)

私は真逆ですかねー……何か相羽は合わない。

まあスタイルズ化はネタでしたけど、美月は非常にやりやすい。
といってかなりキャラはいじってるつもりですけども。


何だろうなあ……
そもそも相羽的(真面目)な要素をプロレスに持ち込みたくないのかなあ。

だってプロレスってウソじゃない。

どうせウソつくならもっと面白いウソをついた方がいいし、
本当の成長物語ならスポーツで見ればいい。


とか言いながら、だらだらみたいに長い話を書いてみると、
美月だって挫折から向上を始めたわけで。

ああ何か自分でも何書いてるかわからん。

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「っと!」
 蹴り足を掴まれるような形で片足タックルを受けた伊達は、
 重心を前に預けてこらえつつ、冷静に背後のロープへ寄りかかってこれを凌いだ。
『ブレイク!』
 レフェリーが間に入り、両者を引き離そうとする。
 仕方なく、美月は伊達の右足を放して立ち上がり、じりじりと間合いを取ろうとした瞬間、
「シッ」
 短い気合と共に、最高位タイトルマッチの洗礼が放たれた。
 左右の張り手から、今まで以上に強烈なローキックに繋ぐコンビネーション。
 いきなり目の前で火花が散ったと思ったら、美月は両足を払われて尻餅をついていた。
 唖然としている暇も無く、伊達がさらに左足を踏み込んでくる。
 今度は、座っている美月の胸板へ向けてのローキック。
「かっ……!?」
 人間の体の一部がぶつかったとは思えない、乾いた音が響いた。
 伊達は、呼吸を忘れて悶絶する美月の上体をもう一度起こし、
 さらに助走をつけて背中へのローキックを狙いにロープへ飛ぶ。
(起きろッ!)
 開始数分で悲鳴を上げている体に鞭を打ち、ここが潮目と見た美月は瞬時に立ち上がった。
 ロープから跳ね返ってくる伊達へ、体の左側面を向けてジャンプ。
 右足を振り上げ、走ってくる伊達の頭へ膝の内側を引っ掛けるように当てる。
 そのまま体重をかけてギロチンドロップの形で後頭部をマットへ叩きつけた。
 神田が使うシザースキックを、自分から飛びついて決めるような形のこの技が、
 完全に伊達の意表を突いてカウンターヒット。
「まだまだ、これからッ!」
 観客と自分に言い聞かせ、美月は痛む体を起こして伊達を立たせにかかった。


 伊達が圧倒的な攻撃力で試合を支配する展開が続くが、
 美月も要所で効果的な反撃を見せて王者に喰らいついていく。
「せっ……!」
 強烈なニーリフトから美月をブレーンバスターの体勢に捕らえた伊達は、
 軽々と美月を垂直に抱え上げた。
 打撃以外にも様々な引き出しを持つ伊達は、投げ技も多種類使いこなす。
 持ち上げきって背後へ倒れ込もうとしたが、美月が自由な手足をばたつかせて抵抗。
 逆さまになった状態から、伊達の頭頂部へ膝蹴りをかまして脱出した。
「うっ」
 またもや予期せぬ反撃を受けてたじろいだ伊達の背中を滑り下り、
 着地と同時に伊達の肩を掴んで跳躍、跳び箱の要領で体を持ち上げる。
 伊達の頭上を飛び越しつつ後頭部を掴み、体重をかけて顔面をマットに叩きつけた。
 この変形のフェイスクラッシャーから、引き起こした伊達をコーナーに振る。
「勝負っ!」
 串刺し攻撃を狙って突っ込んだ美月の眼前で、伊達の右足がスッと一気に垂直まで持ち上がった。
 そこから振り下ろされた踵が走り込んだ美月の額を直撃。
 額が割れこそしなかったものの、美月はたまらず数歩たたらを踏んで後退した。
 そこをすかさずコーナーから飛び出た伊達が捕まえ、振り回すようにして反対側のコーナーへ飛ばす。
「おおぉぉぉぉぉ!!」
 一度対角線上に戻って距離をつくってから、一気に走り込んで右足を振り上げる。
 串刺し式の前蹴りが美月の顔面に突き刺さった。
 伊達が足を引いたあと、糸の切れた人形のようになった美月が力無く前に崩れ落ちる。
 そこを抱き止めた伊達は再度ブレーンバスターで持ち上げ、
 後ろに倒れ込むのではなく、前に下ろすことで美月をコーナーの上に座らせた。
 狙うのは雪崩式のフランケンシュタイナー。
 たまに見せる隠し玉的なわざである。
 伊達は、左右のロープに足をかけて悠々とコーナーを上り、
 ぐったりと動かない美月の目の前で、コーナーを跨いでトップロープ上に両足で立った。
 だが、今まさに伊達が踏み切ろうとしたところで、動けないはずの美月が死んだフリから蘇った。
 伊達を押してバランスを崩させ、たまらずロープ上で屈んだところへ顔面にエルボー。
「……くっ!?」
 よろめいた伊達が、たまらずコーナーから降りようとする。
 その時、不意にひらめきがあった。
(今ッ!)
 伊達がロープ上からマットに飛び降りた瞬間、美月もコーナーから伊達に飛びついた。
 着地の際に下がった伊達の頭を上から手で押さえつけ、両足の間に挟む。
 間髪入れずにマットを蹴り、伊達の長身を後方に折り畳むような前方回転式パイルドライバー。
 電光石火の一撃に会場が沸きかえる中、美月は夢中でカバーに入る。
(どう、だ……!?)
 絶対の決め技に、手応えは確かにあった。
 業界の頂点まで、あと半歩。
 1、2、……と数えられていくカウントが異様に長く感じられた……が、
 結局3つめが数えられることはなかった。
 レフェリーの手がマットを叩く寸前、限りなく3に近いところで、しかし伊達は確かに肩を上げたのだ。
「ああッッ!!」
 美月自身思いもかけない声が出て、両手をマットに叩きつけていた。 
 が、すぐに気を持ち直す。
 もう一度。
 そう考えて伊達を引き摺り起しにかかる。
 だが何とか片膝立ちになったところで、伊達は美月を突き飛ばした。
「この……」
 苦し紛れに何を、と考えて再度近づこうした美月は、やはり勝ちを焦っていた。
 距離を詰めようとした美月の頭を、開いた間合いを利した左のハイキックが薙ぎ払う。
 まともに側頭部へ受けた美月が崩れ落ち、ダメージの深い伊達も体勢を崩して倒れた。
 このダブルノックダウン状態に、客席は一度湧き返ったあと、
 二人それぞれの名前を呼ぶ声が会場中を包みこんだ。
 
 先に立ったのは伊達だった。
 まだ美月が立ってこないのを見て、ゆっくりと頭を振りながら立ち上がる。
 遅れてうつ伏せからマットに両手をついた美月は、
 眼前に立つ伊達に縋るような形でようやく両膝をマットから離した。
 伊達は、右腕を美月の足の間に入れておもむろに持ち上げ、
 ちょうど真横にして持った美月を、何を思ったかコーナーのサードロープとセカンドロープの間に設置。
 そのまま、自分は対角線上のコーナーに下がった。
 為すがままの美月も、それを見ている観客も、伊達の意図がわからない。
(……強かった)
 一人伊達のみが、挑戦者に敬意を表し、新しい技で仕留めるべく動こうとしている。
 これが美月にしてみれば最悪のお節介となった。
 矢のようにコーナーを飛び出した伊達は、対角線を走り切った勢いを乗せ、
 横向きに固定されている美月に向けて思い切り右膝を突き出す。
「………!!!!!」
 声にもならなかった。
 無防備な腹部へ、伊達の全体重を乗せ切った膝小僧が直撃。
 心身ともに疲れ切っていたはずの体が痙攣するように跳ね上がり、
 ロープの間から抜けてマットへ落ちると、体をくの字に折ってひたすらえずいた。
 ほんの少しの胃液しか出てこなかったが、
 美月にしてみれば内臓が口から飛び出ているような感覚。
 直後、ダメ押しの垂直落下式ブレーンバスターでフォールを奪われるのだが、
 試合終了後に即病院送りとなった美月は、そこまで覚えてはいなかった。
 結果として、勝てないまでも多くの見せ場を残した美月だったが、
 強引に挑戦までこぎつけたツケはきっちり払わされることになったのであった。

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by right-o | 2011-11-23 22:06 | 書き物
ちょっと中途半端なとこで切りましたが、今回はちょっと事情があって土曜日更新。
明日は多分、なんか書くような体力が残っていないので。


web拍手お返事 あと2、3回待ってくださいありがとうございます。

>相羽の扱いは何処でも悪いですね。ただ、最近は美月を持ち上げるために貶めているようにしか見えなくて、かなりイラっとしました。一回ぐらいベルトを採らせてもいいんじゃないかなと思っています。(もしくは美月を思いっきり挫折させるなど)

そうそう、最近は完全に美月と対比してダメな人扱いです。
それが何でかと言われると色々あるんですが、一番の理由は相羽に思い入れが持てないということです。
なので、扱いはともかく上手にフォローができない。

とは言え、この話で最後の最後に勝つのは相羽です。
そのためにもそろそろ強化してあげなきゃいけないところですので、本当になんとかします。


>杉浦ってば……恐ろしい子っ! 皆で温泉……神田、ボディだったら負けないぞ! それにしても相羽と杉浦の間には、実力だけではなく考え方にまで大きな差が……ノエルも交えて「美月のだらだら技談義」を和気藹々(?)としていた頃が懐かしいです。

ぶっちぎりで貧相なのが美月でしょうねえ……ボディ的な意味で。
多分、一番凄いのは上戸。実は六角さんよりウエストが細く、バストは上回るという驚異の女。

まあそんなことはどうでもいいんですが、
確かにだらだらしてた頃が懐かしくもあります。
どうしよっかなー、というのが正直なところ。


相羽ねえ……相羽……
やっぱりちょっと助っ人をいれますか。

次回はVS伊達の続き。
伊達は相変わらず望月成晃仕様。
そして多分、忘れ去られてしまったと思われる、とある技がテーマに。

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by right-o | 2011-11-19 22:47 | 書き物
 小細工を弄した美月が、伊達への挑戦権を手に入れてから三週間後。
 初めて単独で迎える最高位王座戦の舞台は、地元だった。
 ほぼ国内を統一状態にあるこの団体にとって、
 最高位ベルトが数千人規模の会場で争われるのは、ここ数年では異例のことである。
 しかし、挑戦者・美月の地元だからということで、この会場が選ばれたのではない。
 それは二次的な理由に過ぎなかった。
 大会場のメインとして据えるには、弱いカードだと思われたのである。
 美月だけでなく、王者・伊達の方も、仲間内での評価はともかく、
 トップレベルの人気という意味ではまだ疑問符がついていた。
 そしてまだ盤石とは言えないからこそ、
 敷居の低い内に挑戦しようとするレスラーたちが数多くいたのであり、
 同じことを考えていた美月としては、水面下のところで卑怯な手を使わざるを得なかったのである。

「勝てるわけがない」
 入場ゲートの裏、神田と一緒に待機していた美月は、誰に言うともなく呟いた。
「え……?」
 名実ともに、自分の数段上をいく王者へ挑戦することについての、紛れもない本心である。
 だが、同時に真逆のことも考えていた。
 たかが相手の肩を3秒床につけるだけのこと、誰が相手でも不可能なはずがない。
「勝つ必要もない」
 帰国後の勢いそのままに突き進んで来た美月にとって、この試合は試金石である。
 無様な試合をすれば、これまでの自分への評価は一変することになるかもしれない。
 しかし、だからといって全てを犠牲にして勝ちに拘る必要もない。
 何しろ、相当熱狂的な美月ファンを例外として、誰も勝つことを期待していないのだ。
 ある程度善戦できればそれで十分であった。
 ただそれでも、もちろん勝って悪いということは全く無い。
 そうなれば、美月は業界の一つの頂点を極めることになる。
「まあ、気楽に」
 最後にそう口に出して自分の思考を振り払い、美月は花道へと足を踏み出した。

 そう大きくない会場ながら、地元ならではの大歓声で迎えられた美月は、
 神田と同じデザインのガウンのフードを目深に被り、普段と同じ足取りで一歩ずつリングに向かう。
 直前でゆっくりとガウンを脱ぎ、かけていた眼鏡を横に放り投げてからロープを跨いだ。
 青コーナーのセカンドロープに上り、沸き立つ客席を軽く一瞥する。
 そこから軽く後ろに跳ね、振り返りながら着地。
 緊張や浮つきと無縁に振る舞う挑戦者は、この日も余計なことはせずゴングを待つ姿勢をとった。
 美月のテーマがフェイドアウトした瞬間から、会場は王者を呼ぶ声援に包まれる。
 哀愁漂うイントロが流れ始め、そこから一転して激しく曲調が変わったところで、
 団体最高位のシングルベルトを肩に掛けた伊達遥が姿を現した。
 数十年前の男臭いアニメソングと、それに合わせた『ハルカ』コールの中で歩を進め、
 リングの手前で見せつけるようにベルトを誇示。
 その後は美月を無視して赤コーナーに上り、再度ベルトを両手で掲げて見せた。
 一度入場ゲートをくぐれば、普段の人見知りはどこへやら。
 才能あふれる若きチャンピオンの、堂々たる姿であった。


 両者とも、ゴングが鳴ってもすぐには動かない。
 伊達はやや開き気味の両手を前に上げ、ほんの少し前傾気味で打撃の姿勢ながら、
 自分から仕掛けずに受けて立つ構え。
 対する美月はぐっと上体を沈ませ、一見して組みつきたい様子。
 しかしアップライトに構えた伊達が付き合うはずもなく、
 美月はタックルを狙うような姿勢のまま、じりじりと距離を詰めて行く。
 あと一歩、というところにまで迫った時、この試合のオープニングヒットが放たれた。
 伊達の右足が鞭のようにしなり、乾いた音を立てて美月の脛を打った。
 思わず声を上げそうなほど痛かったが、美月はそれを押し隠してさらに距離を詰める。
(痛がってたら、触れもしない……!)
 下がりながら再度ローキックを打ってきた伊達に対し、今度は腿に痣が残るほどの蹴りを受けながら、
 美月は自分を蹴った足を掴み、片足タックルの形で押し倒そうと試みた。


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by right-o | 2011-11-19 22:02 | 書き物
というわけでweb拍手お返事 リアクションありがとうございます。

>相羽、良いところ無い……気合と根性だけではどうにもならないこともあるんだよ。こうなればノエルと組むか、越後さんと組んでリベンジマッチを!

そういうわけ、相羽好きの方には申し訳ない試合でした。
負けるにしても、もう少し負け方はあったよね……っていう。

試合に限らず、ちょっと相羽の動かし方がわからない今日この頃ですが、
もちろんまだまだ活躍するはずなので、もう少しお待ちください。


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 美月たちがタッグベルトを防衛した夜、同時に様々な路線の物語が決着を迎えた。
 中堅ベルトを巡る内田と上戸の抗争は最終的に上戸の勝利で終わり、
 内田は試合後の握手でもってそれを認めた。
 そして世界王座のベルトを巡る世代間闘争においては、
 若き王者伊達遥が、主だつ挑戦者たちを全て退け、長きに亘る戦いに終止符を打った。

 そんな記録的な日から一週間後、都心からそう遠くない、とある温泉地にて。
「コレ、一度やってみたかったんだよ。
 熱いお湯に浸かりながらの冷酒ってのがまた、体に沁みいるねぇ……」
 六角が、露天風呂のお湯に盆を浮かせて日本酒を呑んでいた。
「へー、あんなのホントに用意してもらえるんだな」
「勝手に持ち込んでるんじゃないの?」
 その隣で内田と上戸が、激戦を物語る痣だらけの体を湯に沈めている。
 更にその隣では、先輩ばかりの中に一人だけ入って恐縮しきりの神田。
 そして無言で遠くを見つめる美月と、更にその横で暗いオーラを放って湯に沈みかけている相羽和希。
「それにしてもどういう風の吹きまわしだい?全員を温泉にご招待ってのはさ」
「そうね。私たちと、まあ神田はともかく、そこの暗いのまで」
 内田が相羽を顎で示した。
「……ツアー中はともかく、寮に帰ると未だに同室なんですよ。
 部屋でいつまでも暗い顔されてると、こっちまで暗くなります」
 美月にそう言われて、沈みかけていた相羽がちょっと浮いてきた。
「で、結局、何でオレたちをここに呼んだんだ?まさか、日頃お世話になってる先輩方に……
 って柄じゃないし、どーせ何か企んでるんだろ?」
 鋭い、というより遠慮の無い上戸は、ずけずけとそう言ってのけた。
「まあ……そうなんですけど、その前に一つ」
 美月は頭上に置いていたタオルを取って、背中を預けている岩の上に置き、
 お湯に浸かった一同を見ながらこう切り出した。
「この中で、世界王座に挑戦しようって人は?」
 とてもとても、と即座に首を振ったのは神田と相羽。
 内田、上戸、六角の3人は、返答までにやや間があった。
「今のところ興味無いね。当面はアイツでも鍛えてやって、
 もう一回あんたたちのベルトに挑戦するのが目標だよ」
 そう言って、六角は持っていた猪口で相羽を指した。
「興味が無くはないけど……中堅ベルトを落としたばっかりで、
 その上を狙うってのは、ちょっと難しいわね」
「あたしも頂点に興味はあるんだけどさ、
 その前にまたコイツと組んで、お前らのベルトに挑戦すんのが先かな!」
 そう言って肩を組んできた上戸へ、内田は諦めたように抵抗しない。
「あーもう好きにして。あなたと殴り合うのはもう懲りたわ……組んでた方がまだマシ」
「……みなさん、当面は挑戦の予定無しと」
 全員の答えを聞き終えた美月は、ちょっと躊躇ってからこう切り出した。
「実は、ちょっと協力していただきたいことがあります」


 翌日、都内で行われた興行の控室にて。
「あ、神田」
 試合から帰ってきた神田は、同期の近藤真琴から呼び止められた。
「お土産ありがとな。あとで食べるよ」
 神田が控室に置いておいた温泉まんじゅうの箱を振りながら、近藤が言った。
「あ、ああ……」
 神田は、何故か目を逸らし気味。
「なあ、その……お前、やっぱり伊達さんへ挑戦しようとしてるのか?」
「当然だろ。敵わないかもしれないけど、今は少しでもインパクトを残したいんだ。
 ベルトを先に獲ったのはお前だけど、見てろよ、すぐ追いついてやるからな!」
「そ、そうか」
 何も知らない同期に対し、神田は心の中でこっそり詫びを入れていた。

 こちらはまた別の控室。
「あら、お菓子ですか」
 この日タッグで試合が組まれている二人、草薙みことと柳生美冬が控室に入ると、
 簡易机の上に置いてある温泉まんじゅうの箱が目に入った。
「誰かのお土産でしょうか」
「そういえば、杉浦たちが温泉に行くとか言っていたな」
 美冬が箱を開け、白い薄紙に包まれた中身を何気なく摘まんでみた時、
「あんたたち、それ――」
 ちょうど二人の後から、六角が控室に入って来た。
「六角さんからのお土産ですか?ありがとうございます」
「あ、ああ……」
 六角の目は、みことの頭上あたりを泳いでいる。
「あー、ところでその、あんたたちは伊達を狙ってるのかい?」
「当然だ」
「そうですね」
 二人とも即答した。
「あいつとは一緒にやってきたが、つまらない抗争から解放された今、次はこちらを向かせてみせる」
「私も同じ考えです。そして、挑戦は表明するには、今日こそが最適の日」
「そ、そうかい。まあ、頑張りなよ……」
 淀み無くそう言ってのけた二人の前から、六角は苦笑を残してさっさと退散した。

「これでホントにうまく行くのか?」
「さあ。うまく行くかどうかは私たちに関係ないもの。とりあえず頼まれたことはやったわ」
 内田と上戸の二人は、バックステージからメインイベントを覗き見ていた。
「……でも試合後って、結構甘い物食べたくならない?」
「なるよなあ」
 二人も、『お土産です』と書いた温泉まんじゅうの箱を控室に幾つか置いてきていた。
「さて、成功か失敗か、すぐにわかるわよ」
 リング上では、メインの試合が終わり、勝者の伊達が勝ち名乗りを受けている。
 そんな時、影に隠れて覗いている二人の横を、美月一人が通り過ぎて行った。
「うまくいったな」
 そう囁いた上戸に、片眼を閉じて見せた。

『ちょっとすいません』
 タッグのベルトを襷掛けにし、マイクを持って花道に出て来た美月を見て、
 観客からは意外そうなざわめきが起こった。
 リングの手前まで歩を進めた美月は、伊達がこちらを真っ直ぐ見つめるのを確認してから、
 再度ロープ越しに語りかける。
『お疲れのところ申し訳ありませんが、あなたへの挑戦を認めていただきたくて参りました。
 色々と不足はあるかも知れませんが……』
 ここでチラリと花道の後ろを見やる。
『他に誰も……いらっしゃらないようですし、
 ここは一つ、防衛回数を稼ぐと思って、私の挑戦、受けていただけませんか』
 とりあえず、下手に出て見た美月である。
 更に何か言おうとした美月を、伊達が手を上げて制し、自分もマイクを持った。
『……いいよ。あなたの挑戦、受ける』
 普段から言葉少ないチャンピオンは、それだけ言って右手を差し出す。
『ありがとうございます』
 美月は、その伊達の手を力強く握り返した。
 
 その頃バックステージでは、数人のレスラーがトイレを離れられない事態になっていたのだった。

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by right-o | 2011-11-13 21:20 | 書き物
そういえば去年もそうだった気がする。
仕事に限らず、遊びの方も忙しいんだよなあ。


web拍手お返事 ……相羽はまだまだ強くなりませんが、ありがとうございます。

>一切が忘れられた不憫な子に涙……。パートナーは六角さんと頼もしい限り、杉浦を任せて如何にして神田を倒すか。一回やられているだけに心配です!

……なんかすいませんでした。
何か前振りだけで長くなったもんで、つい、相羽の見せ場が……

ついでに六角の見せ場も無いんですよね。
うーん、この埋め合わせはこの先、必ず……


>akiraさん

どうも初めまして、PBeMよろしくお願いします。

私はこのとおりここでリアクションは公開してますし、
折角掲示板もあるんですから、個別ではなくそちらでいかがでしょうか?


>おっ千春と千秋直ってるー……タイトル以外(笑) 安宅さんかっけーっすねぇ。杉浦さんの物語と共に楽しみにしておりますっ

ホントは……千春と千秋の違いなんかも書くはずだったんですけどねー。
タイトルは直しときます……

そういえばPBeMには参加されてないんですか?


何か色々書きたいことあったけど忘れてしまった……

とりあえず、12月の香港旅行を申し込みました。
さーて日本馬は何が来るかな。

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 とある団体の移動バスの中。
「ハッタリでしょう」
 タッグ王座防衛戦の相手、六角のパートナー・Xについて、美月はそう結論づけた。
「私もあなたも、他人から因縁を持たれる覚えは無い。
 加えて私たちより格上のレスラーは、大方既に当日の試合が組まれています」
「あの、私も考えたんですが」
 神田が控えめに口を挟んだ。
「先輩のように、海外から帰国する方じゃないでしょうか?例えば先輩の同期の……」
「ノエルさんが帰国するという可能性はありません」
 眼鏡を押し上げつつ美月が応じる。
「社長に確かめました。ノエルさんは遠征先の団体がどうしても帰してくれないんだそうです」
 自分とは違って羨ましい話だ、とでも言うように、美月は小さく溜息を吐いた。
「とにかく、パートナーは気にしなくていいんですよ。それより本人の方がよっぽど問題です」
「六角葉月、先輩……ですか。実力者だとは聞いてます」
 神田は、膝の上の拳を強く握りしめた。
「そう、普段は何考えてるかわかんないような人ですが、
 格も実力も私なんかよりずっと上ですから、本気にさせたらどうにもならない可能性があります」
 六角は元々、神田以上の超エリートコースを歩んできた人間である。
 加えてガチンコ最強説があったり、現に抜群のアマレス実績があるだけに、
 一部のファンは六角に幻想めいたものを抱いていたりする。
「……勝てるでしょうか?」
「そこを勝てるようにもっていくのが、言ってみれば私の役目ということになるんでしょう。
 その代わり、Xの方はお任せしますよ」
「ハイッ、もちろんです!」
 と、美月たちはこういう意図でもって六角の挑戦を迎え撃ったのであった。


 なので、自分たちより先に入場していた六角の、横に立っている相羽を見ても、
(ああ)
 ぐらいにしか思わなかった。
 もっと正確に言えば、「ああ、そんなもんか」とか「ああ、これなら勝てそうかも」ぐらいなもんである。
 二人同時に入場した美月たちは、リングインからそれぞれにコーナーへ上ってベルトを誇示。
 再度反対側のコーナーへアピールに行こうとした美月の前へ、相羽が立ちはだかった。
「………!」
 睨んでいる、とは言えないまでも、今までになく強い眼差しで美月を見つめる相羽に対し、
 美月はほんの小さく鼻をならして引き下がった。
 お前なんか張り合う価値もない。
 そう態度でもって示していた。

 先発を神田に任せて赤コーナーに控えた美月には、大体の事情が飲み込めていた。
 大方、うだつの上がらない相羽を見かねた六角が、相羽を発奮させるためのタッグベルト挑戦なのだろう。
(お優しい先輩だことで)
 とすれば、六角はあまり自分が前面に出てこようとはしないはずである。
 六角が試合を引っ張って無理矢理ベルトを獲ったとしても、
 相羽が成長できない、もしくは成長がファンに見せられないのでは意味が無いからだ。
(そうはいくか)
 と美月は思う。
 自分からは何もせず、他人からチャンスを与えられたレスラーなどに負けるわけにはいかない。
 相羽を沈めてさっさと終わりにしてやる――
 そんなパートナーの思考が伝わったかのように、先発した神田はいきなり猛攻を見せる。

(大したことない……!)
 序盤、ほんの少し肌を合わせただけでそう直感した神田は、
 テンプレートな寝技の応酬を終えて立ち上がった瞬間、
 いきなり左のボディブローを相羽の脇腹に突き刺した。
「ふぐぅ……!?」
 声にならない呻きを上げる相羽の首を捕まえ、さらに腹部へ膝を数発。
 相羽の上体を完全に曲げさせたところでロープへ走り、反動をつけながら右足を掲げて跳ぶ。
「シッ!」
 美月との練習では決められなかった、相手の頭を横から挟み込むような踵落としが、
 相羽の後頭部に炸裂した。
「え、ちょ……っ!?」
 いきなりの大技にコーナーから身を乗り出した六角を尻目に、神田は淡々とカバーへ。
 美月も当たり前のように赤コーナーで六角のカットに備えている。
 が、当の六角は急なこと過ぎてカットに入れなかった。
 終わったか……と大方の観客までが思った瞬間、なんとか際どく相羽の肩が上がった。
「ちっ」
 神田と美月は同時に舌打ち。
 神田も既に勝負付けが終わったと思っている相手に、今更手こずりたくはない。
 それでも赤コーナーから手を出している美月に気づくと、大人しく先輩にその場を譲って退いた。
 代わった美月は、仰向けになってどうにか立ち上がろうとしている相羽の左足首をいきなり捕獲。
 スタンディングでのアンクルロックだった。
「うぁっ……!?」
 朦朧としていた意識を苦痛で覚醒させられた相羽は、必死に這ってロープへ向かうが、
 美月は一旦わざとロープへ近づけておいて引き戻す。
「相羽ァッ!!」
 カットを躊躇する六角に対し、神田はすぐ飛び出せるように体勢を整えている。
「うう、う」
 少しずつ、少しずつ、もう一度ロープに這う相羽の粘りを嘲笑うように、
 美月は自分からマットに体を横たえ、グラウンドでのアンクルロックへ移行。
 相羽の片手が上がり、六角がもう限界かとカットの姿勢を見せたが、
 それでもなんとか相羽はロープまで根性で這いきった。
(……相手の粘りが光るような展開も癪だなあ)
 作戦変更。
 極めきれなかった美月は、ここで意外にもあっさりと相羽を放し、逆に距離を取った。
 そして六角の方を向くと、挑発するように小首を傾げる。
「仕方がないね……」
 しばらく相羽は使い物になりそうにない。
 そう判断した六角は、倒れている相羽にロープの隙間から手を伸ばした。

(あ、これはダメだ)
 六角と組み合った瞬間、美月はそう直感した。
 体幹の強さも単純な膂力も美月とはケタ違いである。
 美月がグラウンドで適当に遊ばれたあと、変わった神田もいいように弄ばれた。
 といって一方的に負けているわけではなく、美月や神田が攻め手に回る場面もあるものの、
 どうも六角がわざと受けているような感触があった。
 それならば、と美月は、掌の上でいいようにされて悔しい気持ちはひとまず脇に置き、
 勝負に徹して時期を待つ。
 六角の狙いはわかっているのだ。
 青コーナーの相羽が身を起こし、どうにか戦えるまでに回復したのを確認した六角は、
 相対していた神田に一瞬背を向けて青コーナーへ下がろうとする。
 同時に、美月も交代を要求した。
「よし、行きます!!」
 このままでは終われない相羽は、勢い込んで飛び出していく。
 対して美月もダッシュし、正面からぶつかる……と見せて、相羽の左足を両足で挟み込んで引き倒した。
「行って来な……っておい!?」
 機械のような正確さで、再度左足首へのアンクルロック。
 前に立つ神田へ目配せしたが、それを待たず神田は飛び出していた。
 ロープを跨ぎかけていた六角へ体当たりして場外に落とし、自分もその後を追ってリングを下りる。
 今度は極めきるかと見えたところで、美月は相羽の足を放した。
 立て、という目で、友人を見下ろす。
「くっ」
 舐めるな、と立ってきた相羽の頬へ平手打ち。
 打ち返してきたところを更に打ち返し、平手の応酬が肘の応酬に変わっていく。
「それッ」
 思い切り振りかぶった相羽のエルボーが、ついに美月をぐらつかせた。
 が、美月はロープに走り、勢いを乗せたエルボーを打ち返した。
 これにも耐えて見せた相羽は、自分も反動を受けるべくロープへ走る。
「あちゃあ……」
 相羽が背を向けた瞬間、場外で神田と揉み合っていた六角に向け、美月が舌を出した。
(勢い任せの単純バカ)
 走り込んだ相羽の振るう右腕に自分の右腕を引っ掛けつつ、
 相羽の背後に飛びついて右足を左腕に引っ掛ける。
 横十字固め……と見せかけて、咄嗟に体を固くした相羽の背中の上で、美月は一瞬間を置いた。
(それに研究不足)
 この技は相羽の見ている前、対ノエル戦で初めて出した。
 あの時は返されたが、相羽にはこれで十分だと思った。
 タイミングをずらして溜めた勢いと体重を真下にかけ、相羽を後頭部から背後に引き倒す。
 頭を打った相羽は、そのまま為すすべも無く固められてしまった。


 瞬間的には濃密な時間もあったものの、終わってみれば10分足らず。
 軽いハイタッチを神田と交わしたあと、美月は影のように暗く退場して行く相羽を、
 リング上から手を振って見送った。
(ま、暫くは試合で当たることも無いでしょう)
 美月の中では、同期・友人としての情よりも、
 同業者としてずっと恵まれた位置にいる相羽への憤りや嫉妬の方が大きかった。

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by right-o | 2011-11-06 20:22 | 書き物