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10日から実家に帰ってまして、明日市ヶ谷県に戻ります。

旅行するでもなく、コミケに行くでもなく、
日々の仕事で疲れた心と身体(主に肝臓)を休めるため、まったりしとりました。

その代わり、来週か再来週で新潟、来月は札幌の予定。
更に10月は京都、12月は香港の予定。
遊べる時期に遊んでおこう。


web拍手お返事 すいません凄く嬉しかったですありがとうございます。

>杉浦とジョーカーのメキシコ修行面白いです。願わくば、ノエルの方も……そして足蹴にされた相羽の現状も教えてください!

まだ見てくださっててありがとうございます。
1ヶ月半も空いてしまいました……

次で一応さらっと相羽は触れる予定だったんですが、
はてノエル、ノエル……
正直前回の話ぐらいしか考えてなかったので、何か考えるようにします。
……できるだけ、間隔を詰めて。


そういえば、twitterを始めました。
前のオフ会の時、「twitter始めると、ブログの更新が億劫になる」みたいな話を聞いたんですが、
全くその通りでした……

さあ、次は萌えとぴあだ……
とか思い始めてはや一ヶ月。
まだ、いいかな。

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 引き続き、とあるメキシコの夜。
「スペイン語で“乾杯”って何て言うんですかね」
「えーっと……知らない。まあいいじゃん。はい、カンパーイ!」
 部屋に戻った二人は、メキシコ産の瓶ビールで乾杯していた。
 「メキシコでなら、美月の年齢でもお酒飲めるよ」とはジョーカーの談。
 ジョーカーに年齢の話をした覚えのない美月だが、深くは考えないことにした。
 実際、重度のプロレスマニアであるジョーカーなら、美月の年齢ぐらい調査済みかも知れない。
「ところで、何で立ったまま乾杯しなきゃいけないんですか?」
「アメリカでは、乾杯をした相手にスタナーをかける習慣があるから」
「いやどんな国民性だよ。っていうか、それやったら瓶で殴りますからね」
 美月がメキシコに来て数ヶ月、すっかり打ち解けた(?)二人であった。

「DDTって何の略でしたっけ?」
 こんなもん何がおいしいの、みたいな顔でビールを舐めていた美月が、ふとそんなことを言った。
「ジクロロジフェニルトリクロロエタン」
 対して、凄く得意げに、ジョーカーが即答してみせる。
「てっきり、“デンジャラスドライバー~”っていうボケがくるかと思いましたが」
「……ハッ!?」
 意味はわからないが、本気で残念そうなジョーカーであった。
「って、まあ名前は置いといて、そういえばDDT使えばいいのに」
「あー、まあ考えなくはないんですけど、他に使う人沢山いますしね」
 仕掛けるのに体力を使わないDDTは、小柄な美月にとって非常に便利な技である。
 ただし、便利な技であるために使うレスラーも数多く、自分のものとして定着させることは難しい。
「確かに、いい加減使い尽くされた感はあるかなぁ」
 ジョーカーはちょっと小首を傾げて目を瞑り、記憶の中からDDTの映像を漁り始めた。


「いまだにメインのフィニッシュで使ってるレスラーっているんですか?
「ええと……いなくはないね。USAとか」
 ザ・USAは、相手の首を固定したあと、両足を高く上げて思い切り後ろに倒れこむ。
 今時珍しく、正調のDDTをフィニッシュにしているレスラーだった。
「繋ぎ技としてなら、それこそ皆が使ってる。
 でもほんの少し工夫するだけで、かなり印象に残る使い方ができるんだよね。滝とか」
 最近はナルシスト系ヒールが定着してきたミシェール滝は、膝立ちの相手へのDDTをよく使う。
 相手の首を抱えてやや前傾し、反動をつけて倒れるような動きが躍動感を増している。
「あとはちょっと変形して、首を固定したあとで相手の体を掴んで持ち上げて、
 落差をつけた形で落とすのも流行ったかな。ダイナマイトスパイクとかね。
 で、これをリバースフルネルソンの姿勢からやっちゃうのがロイヤルDDT。
 まあ両方とも、頭というよりは顔から落としてる気もするんだけど」
 俗にインプラントDDTと呼ばれる形がダイナマイトスパイクで、
 ダブルアームDDTと呼ばれるのがロイヤルDDT。
 どちらも、DDTというよりはフェイスバスターに見えなくもない。
「あと、ランニングDDTというのは見たことがあります」
「あー、八島ね。あれは受け辛そう」
 ショルダースルーを狙って前傾している相手に対し、カウンターとして、
 前から走り込んだ勢いのまま、首根っこを抱えてDDTにいくのが八島静香。
 真下に向けて八島の体重がかかった状態で落とされるため、かなり危険そうに見える。
「あとはスイング式か。これも全部同じようで微妙に違ったりして。美月の師とかね」
「師匠……とは思ってないんですけど」
 コーナー上に座って相手の首を固定し、
 リング中央に向かって横方向にに半回転しつつDDTを敢行するのがスイング式だが、
 AGEHAの場合、コーナー上から相手に飛びついてから半回転して決める。
 また、ラッキー内田の場合は、マットの上で相手の首を捉えてから、
 逆にコーナーやロープ、タッグ戦であればもう一人の対戦相手等を蹴って回転して見せる。
「それと、私コーナーからやられたこともありますよ」
「あ、それ見た覚えある。相手鏡だっけ」
 鏡の場合、トップロープや、酷いときはコーナーの上に相手の足を引っ掛け、
 強引に落差をつけた形のエグいDDTを放ったりもする。


「ブレーンバスターのステップがDDTとか言う輩を抜かすと、そんなもんかな。
 改めて、使い尽くされた感があるね。
 で、そういえば、何でこんな話になったんだっけ?」
「ああ!そう、そうでした」
 一息吐いてビールを飲み干したジョーカーの前で、美月は傍にあった雑誌を手に取り、
 くるくると筒状に丸め始めた。
「それがですね、ちょうど殺虫剤がないかなって思ったわけで」
 美月はスッと立ち上がり、丸めた雑誌を大上段に構える。
「無さそうだから仕方ありません。……動かないで」
「え……?って、まーたまたご冗談を」
「頭の上で、何か動いてる感じしません?」
 言われてみれば、そんな気がする。
 ジョーカーは、自分の頭に手を伸ばしかけ、慌てて引っ込めた。
「え、まさか黒いヤツ……?」
「うん、黒いヤツ」
 美月は、初めて人の顔面から血の気の引く様を見た。
「Really?」
「マジで。多分、苦手ならトラウマになるレベル。正直、この大きさは初めて見た。流石メヒコ産」
「いや何が流石だよ感心するなよ!じゃなくって、私の頭の上で潰す気!?」
「ここで仕留めないと、部屋中を飛び回るかもしれませんよ」
「………!!?」
 ジョーカーは完全に硬直した。
 まさか潰してくれと言うわけにもいかず、かといって飛び回られても非常に困る。
 ただただ、涙を溜めたすがるような目で美月を見上げることしかできない。
 そんな様子を見ながら、美月は内心で大笑いしながら同時に困っていた。
(まさか本当に引っ掛かるとは思わなかったけど、これ後で怖いかなあ)
 笑いが表情に出ないよう必死に自制しながら、
 美月は透明な虫としばらくにらみ合っていた。

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by right-o | 2011-08-15 08:52 | 書き物
 とあるメキシコの午後。
 誰もいないAACアリーナのリング上で、美月とジョーカーが練習していた。
 ジョーカーがランニングやらスクワットやらの基本練習を嫌っているため、
 自然と二人の練習は実戦形式のスパーリングが主になる。
 それも普通にやるのではなく、毎回ごとにジョーカーがテーマを設定する。
 今回は「シャイニング式の技は出尽くしたのか?」というテーマの下、
 二人は互いに、
 “可能な限り「シャイニング~」と名のつく、
 片膝をついた相手に仕掛ける技を狙っていかなければならない”
 という謎ルールに沿って、今日もスパーリングに勤しんでいた。

(飽きたなあ……)
 低空ドロップキックで膝を打ち抜く王道パターンで片膝をつかせてから、美月は思った。
 もう既に、正調シャイニングウィザードは元より、
 踵落し、延髄斬り、フェイントヒールキック、三角締め等、大概のシャイニングな技が出尽くしている。
 そしていい加減に毎回の謎ルールにも辟易してきていたが、
 とりあえず膝をつかせてしまったものは仕方が無い。
 やる気無くジョーカーの左膝に飛び乗った美月は、勢いのまま適当に右足を突き出した。
「ゲフッ」
 これで意外にも体重の乗った一撃がジョーカーの横っ面を蹴り飛ばし、ダウン。
 美月はこれ幸いとすかさずフォールへ――
「あっ、と」
 倒れたジョーカーと交差するように覆い被さって気がついた。
 カウントを数えるレフェリーがいないため、フォールに行っても仕方が無いのである。
「……ちょうどいいから、ちょっと休憩しよう」
 顔を蹴られて目を回したジョーカーが、下からそう呻いた。

 
「それにしても、流石日本のレスラーはちゃんとフォールで押さえ込んでくるよね。
 こっちは結構、その辺が雑な人も多いんだけど」
「はあ、そういう点は教え込まれましたから」
 基本的に、美月はフォールの際に相手の両肩を両手で押さえる形で体固めに入る。
 大柄な相手の足を抱え込むことは、体格の小さな美月にとって時に楽な作業ではないため、
 手間無く素早くフォールに入ることを優先した形だ。
「ま、そういうの大事だよね。あんまり真面目に押さえ込んで、
 それで本当に試合が決まっても困るんだけど、何ていうか、説得力がね」
 そう言うジョーカーは、基本的に片エビ固め。
 仰向けの相手の左右どちらかから覆い被さり、
 反対側の足を片手で引っ掛けて持ち上げつつ、背中で相手を押さえ込む。
「どんなに焦っていても、持ち上げる足を間違えないのがコダワリ。
 格好悪いからね」
「……ふーん」
 相変わらず、プロ意識なのかオタク根性なのかわからない拘りを語るジョーカーであった。
「あとね、片エビといっても、相手と正対する形で押さえ込むと、ちょっと必死さが増すかな。
 さらに自分の足で相手のもう片方の足も固めるとなお必死な感じ。
 まあでも、これは背中で押さえ込む形でも一緒か。
 相手の両足を両手で抱え込んで、ぐっと相手を折り曲げるんだよね」
「ああはい、そうですね」
 流石についていけなくなった美月は、適当に相槌を打ちながら聞き流した。
「……真面目に聞いてないな。フォールの入り方一つとっても、プロなら拘るべきなんだよ。
 例えば、八島静香。彼女には拘りを感じるね」
「八島静香って、……あの八島さんですか?」
 パワーファイトを売りにする美月の先輩だが、
 とてもフォールの入り方などに拘っているとは思われない。
「わかってないなあ。ほらちょっとそこに寝て」
 ジョーカーは、言われるままマットに横たわった美月の両手首をそれぞれ掴み、
 頭の上に回して万歳させるような形で押さえ込んだ。
「八島のフォールはこういう形。いやー、他じゃ見たこと無いね」
「いや独特な形なのはわかるんですけど、これ全然肩を押さえつけてませんよね」
 何しろ押さえつけられているのは手首だけなので、下になった美月は苦も無く右肩を上げて見せた。
「いいんだよ、カッコよければ」
「いやさっき説得力て」
 口答えしかけた美月に対し、ジョーカーは右前腕で顔面を押さえつけて黙らせた。
「ちなみに、八島がキレてる時はこの形のフォールね」
「………」
 押さえつけながら腕をごりごりと美月の顔面に押し当てて圧迫する。
「よし、跳ね除けてみ」
 ジョーカーがちょっと力を抜いた瞬間、言われるまでもなく美月は跳ね起きたが、
 すぐに力づくで引き倒され、再度腕を顔に押し付けられた。
「と、こういう形で続けてフォールに入って、相手の体力を地味に奪うのがエミリー・ネルソンね。
 ひょっとすると、何かランカシャー的なテクニックなのかな」
 いや絶対それイギリスのランカシャースタイル関係無いよね、とか思いながら、
 美月は次やられたら腕十字に切り返してやろうと決心し、準備する。
「あと独特と言えば十六夜美響かな。Rest In Peaceってね」
 押し付けていた腕を離しつつ、ジョーカーは美月の頭側に移動し、
 美月の両手首を今度は胸の上で組み合わせるように置き、その上から体重をかけて押さえ込んだ。
 ちょうど棺桶に入れられて埋葬される死体のような姿勢である。
(ちっ)
 切り返せなかった美月は心の中で舌打ち。
 が、直後にやり返す機会が巡って来た。
「そしてこれがフレイア鏡式の踏み付けフォール――」
 美月の胸板辺りを踏みにきたジョーカーの右足首を掴み、素早くマット上で姿勢を180度回転。
 ジョーカーの右足に両足を絡ませて引き倒し、足首を脇に挟んで思いっきり反り上げた。
「こ、これは美月がデビューした時の必殺技アキレス腱固め……痛い痛い痛いッ!!」
「ああ、流石によく知ってますね」
 言いながら涼しい顔で更に捻り上げてやった。
「で、でも結局この技でギブアップを取れたことは無……!!」
「そうでしたっけねー。じゃあ記念すべき第一号になってください」
「くぅぅ、ロープが遠い……!」
 あくまでギブアップは拒否し、ロープに手を伸ばすジョーカーであった。
 美月のメキシコでの日々は、大体こんな感じで過ぎて行くのだった。

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by right-o | 2011-08-14 17:31 | 書き物