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「ぐ…ぅ……ッ!?」
 美冬のソバットを腹部に喰らい、伊達は思わずその長身を丸めた。
 さらに屈んだ伊達の後頭部目掛け、一度ハイキックの軌道を描いた美冬の脚が突如方向を変えて蹴り下ろされる。
 バシッ、という乾いた音の後、美冬は伊達の動きが止まったのを確認すると、さらに追撃せんとロープに走った。
 が、美冬が背を向けた次の瞬間には伊達はもう頭を上げ、美冬を追いかけるようにして足を踏み出している。
 そして美冬がロープに背中を預けてリングの内側を向いた瞬間、
「ごほッ!!?」
 ロープを背にして力の逃げ場がない中で、追ってきた伊達の膝頭が美冬の体に突き刺さった。
「セッ!」
 思わず両手で腹を押えて前傾した美冬の首を左脇に抱えると、右手でコスチュームの腰の辺りを掴んで一息に持ち上げ、美冬の体をマットに対して頭から垂直に突き刺す。 
 結局この垂直落下式ブレーンバスターが、この試合最初で最後の投げ技になった。
 普通なら試合が決まってもおかしくない一撃だったが、伊達はあえてカバーに行かない。
 美冬の頭を掴んで立たせると首相撲の状態からさらに膝蹴りを腹部に2発。
(「これは………お返しだっ!!」)
 痛みに耐えかねて美冬が膝をついたのを見て、伊達は左に重心を移して右足を引いた。
(「今!」)
 顔面を狙った伊達のローキックが美冬に届くより一瞬早く、美冬は低い姿勢から一気に飛び上がると、右足の甲で伊達の側頭部に襲い掛かる。
『雷神蹴ゥゥゥゥーーー!!!!』
 実況アナウンサーが絶叫する中、美冬必殺の延髄斬りをモロに喰らった伊達は、糸の切れた人形のようにばったりとうつ伏せに倒れた。
 一方で、蹴った美冬の方も痛みと疲労のせいで着地に失敗して背中から落ち、カバーに行く余裕が無い。
 試合開始から10分。
 ようやくプロレスらしい展開を見せ始めた矢先に、二人の試合は膠着を迎えた。


 この試合、伊達と美冬は双方共に引けない。
 団体対抗戦なのである。
 伊達が所属する方の団体が行っているこの興行において、双方が1勝1敗1分で戦績は全くの互角。
 勝負はこの伊達対美冬、両団体で次代のエースと目される者同士の一戦にかかっている。
 加えて両者には因縁があった。
 一月前、美冬の側の団体において対抗戦が行われた時のこと。
 美冬には伊達より格下の相手との試合が組まれていたが、その試合において美冬は、膝立ちの相手の顔面にソバットを叩き込んでKOしてしまったのである。
 美冬にしてみれば「舐めるな」という意思表示だったのだが、もちろんやられた方の団体の選手達は怒った。
 そして大人しい伊達でさえ、普段滅多に感情を表さないその瞳の奥に静かな怒りを燃やしていた。 


 そういうわけで、試合開始直後から両者が共に得意とする強烈な打撃技の応酬が繰り広げられることになった。
 感情剥き出しで殴りあう場合、自然相手の顔を狙うことが多くなり、その様子はリングサイドで見ている両団体の社長などは試合を直視できなかったほど。
 しかし双方がこのままでは埒があかないと思ったのか、次第にプロレス的な動きが混ざり始めたものの、それでもこれまでのところ二人の戦いは全く互角のまま動く様子がない。


「………っく」
「う、う……」
 ダウンから立ち直るのもほぼ同時だった。
 伊達はうつ伏せから膝をついて、美冬は仰向けからなんとか上体を起こして立ち上がろうとすると、ちょうどお互いの視線がぶつかる。
(「その……目が嫌い……!」)
(「もう、許せん……!」) 
 もはや元々の原因などは忘れ、この場においてはただただお互いへの憎しみしか覚えていない。
 両者同時に拳を固く握って立ち上がると、そのまま相手の顔面に叩きつけた。
 二人ともレフェリーの注意などは全く耳に届いていない。
 続いていきなりハイキックが交錯すると、ロー、ミドル、ハイ、膝蹴りとまたまた試合序盤のような乱打戦へ突入した。
 「ハッ!」
 と今度は伊達がソバットを決めると、続けて先程のお返しとばかりに、前傾した美冬の頭を切り落とすかのような踵落しを見舞う。
 対して美冬もこれに耐えると、伊達の意表をついて裏拳をくらわせ、傾いだ頭へさらにハイキックで追い討ちをかける。
 片方が流れが引き寄せると、他方がすぐに引き戻す。
 やはりまだ決着は見えない…と、リングを見守る観客がそう思いかけた時、ついに均衡が破られた。
「グッ……!」
 伊達の右ミドルキックが美冬の脇腹に決まり、美冬の反撃の手が止まったのだ。
(「効いてるの…!?」)
 再三腹部に入れた膝蹴りのダメージが蓄積されていたか、と伊達は感じ、それは半ば本当でもあった。
 しかし実際のところ、これだけ熱の入った打撃戦をこなしていながら、つまり美冬はどこか頭の一点が冷静だった。
 三味線を弾いているのである。
(「ミドルで崩した後に左でハイを狙いにくる、…それがヤツの定石。その左の大振りをかわして、仕留める!」)
 完全に気持ちだけで闘い、もはやほとんど思考をしていない伊達と、この期に及んでまだ冷めた部分を持ち合わせる強かな美冬。
 結局はこの点が勝負を分けた。
「…ヤッ!」
 脇腹を庇って注意が薄れた頭部を狙った伊達の左ハイキックは、大きく空を切った。
 体を沈めることでこれを避けると同時に力を溜めた美冬は、こちら側を向いてガラ空きになっている伊達の後頭部に照準を定める。
(「もらった!」)
 二度目の雷神蹴を狙って飛び上がろうと体を躍動させたところへ―――
「なっ…!?」
 空を切ってマットについた左足を軸に、続けざま放たれた伊達の右後回し蹴りが襲い掛かった。
 それもちょうど踵がこめかみを直撃する形で最悪の一撃をもらい、この時点ですでに美冬の意識は朦朧としている。
 虚を衝かれて何が何かわからないまま、美冬の霞んだ視界には唇を真一文字に結んで自分を睨みつける伊達の顔が映っていた。
 その目は、美冬が今どんな状態にあるかということなど全く意に介していない。
 そもそも伊達の頭には試合中に相手の出方を窺うような余裕も思考も始めから存在しない。
 ただその場その場で純粋に、体の動くままに闘うだけである。
(「く…そ……」)
 最後に、正調の右ハイキックがわずか残った意識ごと美冬の頭を薙ぎ払った。
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by right-o | 2008-03-31 22:07 | 書き物
馬券だけでなく体調も。
やっぱり花粉症かな…。

まあそういうわけでまたまた外れました。
高松宮はともかく、マーチステークスはちょっと悔しかったり。

中山に行ったところ、カラジへのメッセージを募集していたので
ちょっと書いてきました。
日本語と英語が混ざった文章なので理解できるかは知りませんが、
来週の引退セレモニー(?)の際に渡してもらえるとのことです。
まさか引退記念行事を行ってくれるとは思わなかったので意外でした。
これはJRAに感謝。


それと昨日がドバイワールドカップデーだったのをすっかり忘れていました。
結果は…まあ、世界の壁は厚いってことでしょうか。
まさかヴァーミリアンがあんなに負けるとは思いませんでしたけど。



さらに今週末はプロレスでも世界最大規模の祭典が行われています。
WWEのレッスルマニアだけでなく、TNAやROHもビッグマッチを行ったとか。

といっても私が気になるのはやっぱりレッスルマニア。
アンダーテイカーの無敗記録は止まるのか?
ビッグショー対メイウェザーはどう決着をつけるのか?などなど。

ま、そもそも日本での放送は3週間遅れな上に
スカパーが見られないんじゃどうしようもないんですけどね。

どこかに親切な人がいないもんかなあ…
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by right-o | 2008-03-30 20:45 | 競馬
今日の内に色々と読んだり書いたりしておきたかったんですが、
Gジェネが面白くてついやり過ぎてしまってます。
シーマ視点の0083も面白いなあ。


さて今日も外したわけです。
それにしても日経賞のマツリダゴッホは強かったですね。
問題は舞台が変わっても同じような走りができるかということですが、
この後は天皇賞ではなく香港に行くようです。


そして明日は今年初の芝GⅠが。

高松宮記念
◎ローレルゲレイロ
○スズカフェニックス
▲スーパーホーネット
△ファイングレイン
△マルカフェニックス
△エムオーウィナー

コースが狭い上に開催後半の荒れ馬場、さらに雨も降りそうということで、
内側の枠はどうかなと。
外枠◎で。穴も外枠から。


マーチステークス
◎フィフティーワナー
○ボンネビルレコード
▲ブラックランナー
△ナナヨーヒマワリ
△アドマイヤスバル
△サンツェッペリン

普通です。
サンツェッペリンは新馬戦でダートを使って負けていますが、
こことは距離などの条件が全く違うので一応押えてみます。
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by right-o | 2008-03-29 23:24 | 競馬
川柳はついに最終回ですね。

「優香さん どいてください 写るから」
地獄の探検さんおめでとうございます。

率直に言って最終回で優香をネタにした保科句というのは意外でした。
でもまあ、愛のメンバーが皆揃って記念写真ということで、
綺麗に締まったと思います。
いくつか写らなくてもいいものも写り込んでますけど。


自分の句
「人間を 笑顔で化かす 真帆狐」
最後は真帆句で…と決めていたものの、
最終回と絡めたネタを思いつかなかったので結局こうなりました。


それにしても、週に一度の楽しみだったレッスル川柳が無くなるのは寂しいですね。

私の場合、去年の8月にブログを始めると同時に送り始めたので
大体半年ちょっとぐらいの間、毎週川柳を考えていたわけですが、
金曜日に携帯で更新をチェックする時のドキドキ感はなかなか楽しめました。

結局イラスト化は一回だけでしたが、あの時は嬉しかったなあ…
できれば2が発売された後に復活して欲しいところです。
難しいでしょうけど。


そして「今週の注目キャラクター」は小川、菊池 金森の3人。
レジェンド→サバイバー→レジェンドという流れで
3人それぞれの登場自体には驚かないけれど、
この組み合わせは少し意外だった感が。

この3人の中で、特に技SSで書いてみたいキャラとしては菊池。
フランケンが必殺技なので、ウルトラウラカンラナとか。


それにしても、川柳が無くなって
来週からレッスルネタの更新どうしよう…
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本当は明日、中山に行くはずだったんだけどなあ…


日経賞
◎トウショウナイト
○マツリダゴッホ
▲ココナッツパンチ
△シルクフェイマス
△アドマイヤモナーク

有馬記念馬○ですが、過去10年で斤量59キロ出走馬がいないようなので、
中途半端なデータ派としてはどうしたもんかという感じです。
言うまでもなく中山実績は抜群だし、さらに鉄砲駆けする馬でもあるんですが…
ただし一番人気は間違いないので、ここは去年このレースで○に先着した◎から。


毎日杯
◎マイネルスターリー
○ヤマニンキングリー
▲サブジェクト
△ディープスカイ
△ロードバリオス
△アドマイヤコマンド

前走重賞組、特に成績の良い共同通信杯組◎から。
人気するみたいですが、流石に新馬からいきなりは辛いと考えて
コマンドは押えに。


今年はペガサスジャンプに外国馬無し。
本番でもまずいらないでしょう。
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by right-o | 2008-03-28 21:00 | 競馬
中山グランドジャンプに向け来日して調整中だったカラジが、
調教中に屈腱炎を発症し引退だそうです。

…といっても、平地しかやらない競馬ファンの中には
全くこの馬のことを知らない人もいるかと思います。


私ににとっては、短い競馬歴の中でこれが最もショックだったニュースかもしれません。

このカラジという馬は日本唯一国際招待のある障害GⅠ、
中山グランドジャンプを2005年から2007年まで3連覇していたオーストラリアの馬です。

しかも初めて勝った時には既に10歳という高齢馬でした。
タップダンスシチーが金鯱賞を6歳から3連覇しましたが、
この馬はさらに年齢を重ねているにも関わらず、GⅠを、
それもアウェーの日本で同じことをやってのけたわけです。

相手だって弱くありませんでした。
2度目の制覇となった2006年は「障害のディープ」テイエムドラゴンとの一騎打ち、
そして3度目の去年の2着馬は、この前の中山大障害を勝ったメルシーエイタイムです。

何故遠く離れた日本でこんな成績が残せたかというと、
もちろん馬自体がコース適性や凄まじいスタミナを持ち合わせていたことに加えて、
前年の秋から翌年のグランドジャンプを見据えて調整を始める、というぐらいに
毎年本気で勝負をかけてくる厩舎陣営の姿勢が大きいんじゃないかと思います。
ジャパンカップ叩いて香港に行くような馬とは仕上げが違うんですよ。


そういうわけで、凄い馬なんですよ。カラジは。
そして何より好きな馬でした。

430キロぐらいの小さな馬体で、
主戦のスコット騎手のとんでもない風車ムチに応えながら中山の坂を上がってくる姿は
本当に健気で、とても印象に残っているし、
何より毎年人気に応えてキッチリ勝って翌日の皐月賞の資金を作ってくれたわけで、
自分にとって忘れられない一頭です。

それだけに…
13歳になった今年はどんなレースを見せてくれるかと思い、
早速今週のペガサスジャンプステークスで走る姿を観に行こうと楽しみにしていたのに…
もう見られないと思うと、なんとも言えず悲しい気持ちになります。


これだけの偉業を成し遂げた馬なんだから、
せめて日本にいる内に何か引退記念の行事でも行なってくれればと思います。
ただ…平地ならともかく、障害の扱いは悪いですからね。

今週か、グランドジャンプの週に中山に来てくれないかな…
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by right-o | 2008-03-27 22:18 | 競馬
seizannさんに「三角締め」をイラスト化していただきました。

文中、桜崎が指摘している通り確かに脚の組み方が逆なんですが、
これ元々私が間違えて左右の脚を逆に書いてるんですよね(汗

まさか絵にしていただけるとは思わなかったので、つい適当に書いてしまって…

…いや多分、技を掛けられる方を妄想して書いていたために、
自分の利き手の左腕に掛けられている想像を文字にしてしまったのかも。

何にしても私なんかの文章からイラストにしていただいて、
本当にありがとうございました。



先週、今週と思いがけず自分の書いたものに反応をいただいて、
大変嬉しく思っています。

これからも続けていきたいと思っていますが、
まだまだ至らない部分も多々ありますし、自分でもできるだけ改善していくつもりです。
そういう意味でも、以前に書いた通り他のサイトさんの文章を読んで勉強させて
いただこうと思っています。

そういうわけで(?)、ココでもNEW WINDさんを真似て、
一度読書感想文で一本更新してみようかと。

とりあえずは相互にリンクさせてもらっているサイトさんが中心になると思いますが、
自薦他薦は問いませんので、ここぞという場所があれば教えてください。
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UP前にチェックした時は万全だったはずの文(内容はともかく)から、
改行ミスやら表現の重複が出てくる出てくる。


今回本当は「ラッキーキャプチャー」のつもりで
ジューシーペア対ゴールデンペアを書いていたところ、
長くなりすぎてまとまりがつかなくなってしまいました。
この4人自体にはそれほど特別な思い入れはなかったはずが、
書いてる途中で試合を省略するのが何か勿体無く感じて
結局ラッキーキャプチャーとは関係の無い話になってしまったので…



そういうわけで、今回はジャーマンをテーマに書いてみました。
一回転・投げっぱなし・ロールスルー+二段式・ロコモーション・高速+だるま式・雪崩式、
そしてクロスアームと、思いつく限りのジャーマンを書いてみたつもりで、
後はスパイダージャーマンぐらいしか残っていないと思うんですが、いかがでしょうか?

三角締め一つの動作に時間をかけた前回と違って、
今回は試合全体を通して色々なジャーマンを2人に使わせてみたわけですが、
書いている分には今回の方が楽しかったです。

永原の方は旧作や愛において「LV2ジャーマン」を持っているということで、
試合中に極端に乱発するという設定にしておいて、
それに意義を唱える相羽とどちらの言い分が正しいか決着をつける…
という筋書きでしたが、終わってみれば蛇足だったような。
妄想してる方としては楽しいんですけどね。こういうのも。

そしてどうでもいい話ですが、「ジャーマン」で何か書いてみようという
切っ掛けになった一発というのがあって、
それを見せてくれたレスラーへのいわゆるリスペクト(?)ということで、
ジャーマンとは関係ない部分でその選手の動きをパクっています。
「フラップジャックで投げ上げた相手の落下を空中で掴まえてジャーマン」という
ちょっと想像し辛い動きで、これには中々驚かされました。

他にも今回書いたジャーマンの中にはそれぞれモデルになった一発というのがあって、
そういう意味でも本当に妄想を文章に起したという感じがします。



さて前回と今回は比較的メジャーな技でしたが、
次回はちょっとマイナーな技でいきたいと思います。
対戦カードとしては、
「伊達対美冬」か「チョチョカラス対ジョーカーレディ」のどちらかで。
ラッキーキャプチャーはまだ時間がかかりそうです。
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「永原先輩は、間違っていると思います!」
 後楽園の休憩明けに組まれた中堅対若手の平凡なシングルマッチは、この相羽の一言によって少し注目されるようになった。
 常日頃からやる気や負けん気は強い相羽だったが、他のレスラーを否定してまで自己主張することは珍しい。
 その原因は、2人が共通して使っている必殺技にある。
 ジャーマンスープレックス。
 恐らく最もメジャーなプロレス技の一つであり、当然使い手も多い。
 それだけに、大概それぞれがジャーマンについて一家言持っていたりする。
「1試合に5回も6回も…。あんな使い方、技が泣いてます!」
 というのが相羽の主張。
 確かに永原は、打撃以外全てジャーマンかというぐらいに多用することがある。
 そんな相羽の言い分についてコメントを求められた永原は、
「ぐだぐだ言わずに、決着はリングでつければいいのよっ!!」
 と一言。
 どちらが強いとか弱いとかいう話じゃないだろう、というツッコミは、あえて入れないのがプロレスファンである。


 ゴングが鳴ってから暫くの間、両者構えて向かい合ったまま相対していた。
 二人とも、特に相羽は試合開始直後から油断無く相手のジャーマンを警戒している。
 そして、やはり永原が動いた。
 相羽の脇をするりと抜けると、経験の差を見せつけてまずは楽々とバックを取る。
 ただ、当然相羽も次に何をされるかはわかっているわけで、両脚を踏ん張り、背後から腰に回った腕を掴んで抵抗しようした。
 が、しかし。
(「あれっ!?」)
 永原が両腕を回してホールドしているのは、相羽の腰ではなく脇のあたりだった。
「やぁッ!!」
 気合と共に放り投げられた相羽は、浅い掴み方をされたせいで余計に回転し、後頭部ではなく顔面から「べちゃっ」という感じでマットに墜落した。
 うつ伏せの相羽を無理矢理ひっくり返しての永原のカバーはカウント2。
「っく…負けるもんか!!」
 相羽は、引き起こしにきた永原の手を跳ね除けてエルボーを連打すると、ロープに飛んでもう一発見舞う。
 永原も一旦はこれに応じると見せて、相羽の大振りを避けると背後に回って今度は正調の投げっぱなしジャーマン。
 その後も事あるごとに永原のジャーマンが決まるが、その都度相羽はなんとか意地でクリアしていく。

 10分が過ぎた頃、漸く相羽の番が回ってきた。
 ジャーマンの体勢で背後に回った永原に肘撃ちを当てると、今度は相羽が素早く永原のバックを取った。
(「くる!?」)
 後に投げられまいと重心を前に置いた永原の意表を突いて、相羽は永原ごと前方のロープに体を預ける。
 その反動で、永原の体をまるで低空のジャーマンを見舞うようにして背後に反り投げるもこれはフェイント。
 いわゆる「ジャパニーズレッグロールクラッチ」という固め技である。
「…っこのぉッ!!」
 レフェリーがカウントを数えようとした時、両肩をついたまま仰向けに「く」の字に曲がっている永原の体を、相羽がマットから強引に引き抜いた。
 そのまま半円の頂上までゆっくり孤を描くと、頂点から一気に加速をつけて永原を後頭部からマットに突き刺す。
 相羽の必殺技、投げる動作に緩急をつけた『スターライトジャーマン』が完璧に決まるも、
「…くッ!!」
 カウント3ギリギリでここは永原も返していく。
 試合前の相羽の発言を考えれば、ここは絶対に一発で負けるわけにはいかなかった。
(「やっぱり相羽、言うだけのことはあるじゃない…!」)
(「永原先輩、次で絶対に仕留める!!」)
 痛む後頭部を抑えつつ立ち上がった永原に対し、相羽は正面から組み付いて急角度のフロントスープレックス。
 さらに続けて捻りを加えたバックドロップを見舞い、着々と自分の思い描く幕引きへの布石を打っていく。
 他の技で入念に頭を揺らしておいて、絶対の自信を持ったジャーマン一発でフィニッシュ。
 それが相羽なりの必殺技の美学だった。

 暫くの間、それまでの鬱憤を晴らすかのような相羽の攻めが続いたが、永原は相羽がロープに振ろうとしたところを逆に振り返すことで、なんとか流れを変えようと試みた。
 しかし、身の軽い相羽は振り返された勢いに逆らわずにそのままセカンドロープに飛び乗ると、その反動を利用してのトペ・レベルサで再び永原に逆襲を図ろうとする。
 こういうあたりは、経験不足と言えるかもしれない。
「しまった!?」
 と、両足が宙に浮いてから後悔しても、もう遅い。
「せえぇぇぇいッ!!」
 永原にしてみれば投げてくださいと言わんばかりの姿勢で飛んできた相羽の体は、ほんの一瞬後には永原の後方で鋭角に折れ曲がっていた。
 隙さえあれば即ジャーマン、それが永原流の美学である。
 そしてさらに、頭上に星が飛んでいる相羽を引き起こすとそのまま有無を言わさずジャーマンへ。
「まだまだ、こんなもんじゃ済まないからね!」
 逆さまになったままでそう宣言すると、相羽の腰に回した腕を放さないまま横回転で立ち上がり、そのままもう一度ジャーマン。
 同じ要領で3発目を放とうとした時、
「ヤッ!」
 相羽は余力を振り絞って自分からマットを蹴ると、背後に投げようとする永原の力を利用して空中で後方に一回転し、永原の背後を取った。
(「まずい!?」)
 危機を感じた永原は、自分がこの試合一度目のジャーマンをかけようとした時に相羽がやったように、思わず腰周りに伸びてくる腕を警戒して脇を締め、両腕をぴたりと胴体につけた。
(「構うもんかッ!!」)
 永原の防御体勢に対して咄嗟にそう判断した相羽は、両腕ごと永原の腰に腕を回すと、
「いっやぁぁぁぁぁぁ!!」
 掛け声と共に一息で永原を投げきった。
 投げ方も尋常ではなく、通常の場合一瞬腰を落として力を入れてから投げるところを、今回の相羽はそういった一切の“ため”を作らず、相手に受身の猶予を与えないまま可能な限り素早く投げるというもの。
 相羽が密かに開発していた、スターライトジャーマンの新しい形であり、投げの動作に緩急がつく以前の形に慣れている相手であれば、まず受身を取ることは不可能だ。
『1!2!…っ!!』
 だが勝負が決まる寸前で、永原はかろうじて肩を浮かせた。
 しかし意識は完全に体の外に出ており、恐らく自分が何をされたのかもはっきりとはわかっていない。
 それでも返すことができたのは、『負けたくない』という無意識の意地と、相羽が相手の両腕を抱き込む慣れない形で投げざるを得なかったことが原因か。
 投げられる前の防御姿勢が一応は役に立ったとも言える。
「クッ………!?」
 相羽としては信じ難いことだったが、返されたからには次の攻め手を考えなければならない。
もはや自力で立てない永原を無理矢理起すと、ブレーンバスターの体勢から右手で永原の左足の膝を前から捕まえ、そのまま持ち上げた後、左の脇に固定した頭から垂直に落としていく。
 落とした後も両腕のクラッチを解かないまま、ちょうど永原がジャーマンでやったのと同じ要領で2発目のフィッシャーマンバスターを喰らわせると、3発目にいくと見せかけておいて今度は持ち上げた姿勢から前方に背中を叩きつけた。
「今度こそ…終わりっ!」
 ジャーマンを乱発する永原を非難した手前、もうジャーマンは使えないし、相羽自身使うつもりもない。
 仰向けに叩きつけられて青息吐息の永原の位置を確認すると、相羽は丁度いい角度と距離を考え、永原に背を向けて手近のコーナーに上り始めた。
(「起きなきゃ…負ける!!」)
 霞む視界で相羽の背中を見ながら、永原はなんとか少しづつ上体を起こし、次に膝をついて立ち上がり始める。
 ムーンサルトを狙う相羽の方も今までの疲労から足に力が入らず、上るのに手間取っていた。
 相羽がふらつく足でどうにかコーナー最上段のトップロープ上に立った時、永原も最後の力でコーナーを駆け上がる。
「えっ…!?」
 背後の殺気に気づいた時には、もう腰に手が回っていた。
 雪崩式のジャーマンスープレックス。
 『まさか…』と固唾をのんで2人の戦いを見ていた観客達は、一瞬声を失った後で地鳴りのような重低音で一斉に足を踏み鳴らした。
『おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!?』
 投げた永原は背面から、投げられた相羽は一回転して正面からほぼ同時にマットに激突、バン、というとてもリング上とは思えない音を出し、わずかにマットが波打ったようにさえ見えた。
 自分が投げた方とはいえ暫く体が動かなかった永原は、ややあってから両手をついて身を起し、膝立ちのまま相羽に歩み寄ると、まず自分が立ち上がり、ついで相羽の背中を掴んで後ろ向きに強制起立させる。
(「私の取って置きを見せてあげる!」)
 それが、互いに死力を尽くして闘った相手へ示す敬意だった。
 両腕を相羽の前に回すと、右手で相羽の左手首、左手で相羽の右手首を掴む。
「いくよッ!!」
 相羽の前面で相羽と自分の腕を交差させた姿勢のまま放つ、ジャーマン。
『1!2!…3!』
 これにより、休憩明けながら25分に及んだ死闘についに幕が下ろされた。


 試合後、2人は互いの健闘を称え合い、それぞれの必殺技への拘りを理解しあった。
 ファンにとっても、対決を煽ったマスコミにとっても、そして実際に試合をした2人にとっても、「結局、どちらの言い分が正しかったのか」などという疑問は、既にどうでもよくなっている。
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by right-o | 2008-03-23 23:38 | 書き物
空飛ぶズゴックは無いだろうと思いつつ、
IGLOOのシナリオが面白くて危うく更新を忘れるところでした。
濃いなあ…キャラが。

ただ今までプレイした1~4話、全て同じオチだったような。


今日のフラワーカップ、◎から馬単で買っていたところ見事にヒモ抜けでした。
中央に来て以来、ウチパクとはすっかり相性が悪くなった気がします。


スプリングステークス
◎レインボーペガサス
○ショウナンアルバ
▲サダムイダテン
△スマイルジャック
△ドリームシグナル
△アサクサダンディ

人気馬を上から並べたようなもんです。
唯一穴っぽいアサクサダンディは、前走芝500万勝ちから好走する馬がいることから。
相性が悪いと言いつつ、やっぱり内田騎手から買うことに。


阪神大賞典
◎トウカイトリック
○ポップロック
▲アドマイヤジュピタ
△アドマイヤフジ
△ダークメッセージ

日本一堅いことで有名な重賞ですが、
一応マイソールサウンドが勝ったこともあるわけだし、少しだけ人気に逆らってみます。
○はメルボルンカップ2着があるものの、1着はデルタブルースだったわけで、
国内の長距離は走ってみなければわからないかも…
というわけでとにかく長い距離に定評のある◎から買います。



巨大ビーム砲、モビルタンク、欠陥機、空飛ぶズゴックときて…
さて、最終話はなんだろう。
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by right-o | 2008-03-22 23:34 | 競馬