「ナパームラリアット」ボンバー来島VSオーガ朝比奈

 ガルム小鳥遊、フレイア鏡、オーガ朝比奈。
 今シリーズから、上記3人のいわゆる「フリーの3大ヒール」が
 新女に参戦することになっていた。
 新女側からこれを迎え撃つのは、団体内きってのパワーファイター・ボンバー来島。
 まずは開幕戦において、3人の内で最も若い朝比奈を相手に、
 早速新女の意地を見せ付けるべく意気込んでいた。

 しかし、相手はフリーの3大「ヒール」である。
 ゴングが鳴ってからほんの数分後、
 力と力のぶつかり合いを望んだ観客の期待を嘲笑うかのように、
 早くも試合は大荒れの様相を呈していく。


「うわっ!?」
 ロープに飛んだ来島の背に、当然あるはずトップロープの感触が無い。
 リング下から鏡がロープを下げたのだ。
「おぅらッ!」
 思わず場外に転がり落ちた来島を、今度は小鳥遊が容赦無く鉄柵に投げ飛ばす。
 リング上で高見の見物をしている朝比奈含め、
 普段はそれぞれ別個に動いている彼女らが連携しているのは、
 恐らく鏡の働きかけによるものだろう。
「くっそ……!!」
 その後、鏡と小鳥遊の2人は来島を観客席に投げ込んで蹂躙したあとで、
 仕上げとばかりに小鳥遊が来島の右腕を捕まえ、鉄柵の上に叩きつけた。
「やめろぉッ!」
 止めに入った佐尾山などのセコンド陣と小鳥遊がやり合っている間に、
 朝比奈はレフリーを引き付け、残った鏡が一人イスを持って笑みを浮かべる。
「うふふふ……」
 非難した観客が遠巻きに見守る中、
 動けない来島の右腕が、客席とリングを隔てる鉄柵の上に乗っているところへ、
 鏡は躊躇無くイスを振り下ろした。
「うあああああ!!!」
 右腕を押さえてのた打ち回っている来島がリングへ放りこまれると、
 待っていた朝比奈は全体重をかけて両足で来島の腕に乗り、さらに痛めつける。
「オラオラ、自慢の右腕はもう使えねーかぁ!?」
 そして散々悪態を吐いた後で強制起立させ、ロープへ振ったところで、
 鏡からイスを受け取った小鳥遊がエプロンに上がって来島の脳天へダメ押しの一撃。
 千鳥足で戻ってきた来島の胴を捕えて、
 必殺のスクラップバスターでトドメを刺した。
 だが、まだこれでは終わらない。
 レフェリーが3カウントを入れる寸前に自らフォールを外した朝比奈は、
 ほとんど意識の無い来島の髪を掴んで立たせ、
 頬を叩きながらさらに来島を侮辱しにかかる。
「最後は、お前の得意技で決めてやるよ!」
 そう言い放つと、走りこんでから来島の首へ右腕を叩きつけた。
 肘の内側で相手の首を刈り取るような一発だったが、
 来島はふらついただけで、なんとか立っている。
「チッ、効かねー技だな」
 朝比奈はそう吐き捨てつつも、内心では、
(なんで、まだ立っていられるんだ……?)
 と訝しんだ。
「オラ、もう一発だ!」
 再びロープの反動を利用してラリアットを狙った朝比奈に対し、
 今度は来島が動き、助走無しでラリアットを返してきた。
 2人の大きな体がぶつかり合い、汗が飛ぶ。
「な……ッ!?」
 相打ちになったダメージはほとんど無いものの、
 ついさっきまで死に体だったとは思えない力強さを来島から感じ、
 朝比奈は思わず戸惑った。
「……んなもんかよ」
「なに…っ!?」
「そんなもんかよ!?お前のラリアットはよ!!?」
「このッ!!」
 両者同時にロープへ飛ぶと、2人ともラリアットを狙って右腕を振りかぶる。
(目が覚めたぜ…)
 一瞬、来島はついさっきもらった朝比奈の一発を思い出していた。
 腕力は申し分無い。
 しかし、まだまだ未熟。
 来島に言わせれば、ラリアットに肘から先は必要無い。
 また、相手の頭を刈るだとか薙ぎ倒すといったように、腕を振る動作もいらない。
 鍛え上げた力瘤を、ただ相手の喉に捻じ込むこと。
 それさえ出来れば自然に体重と勢いは乗り、相手は必ず倒れる。
 これこそが、来島のナパームラリアットであった。
「おりゃあああああッッ!!」
 腕を振り回した分だけ立ち遅れた朝比奈のラリアットを問題にせず
 打ち勝ったナパームラリアットは、
 朝比奈の意識を飛ばし、今夜も来島に勝利をもたらした。


「お前のラリアット、目覚ましにもならねーな。全然効かねえんだよ!」
「テメェ、俺が遊んでやらなきゃ負けてたんだぞ!わかってんのかよ!?」
 そして、試合後もまだ罵り合っていた2人にとって、
 この試合の決着は長い長い抗争の始まりにしか過ぎないのであった。
[PR]
by right-o | 2008-07-12 22:29 | 書き物