「ドラゴンウィップ」「ヘラクレスカッター」めぐちぐVSジューシーペア

※一応「ラッキーキャプチャー」から話は続いていますが、
  内容はあまり関係ありません。


 ジューシーペアの参戦から一週間後。
 タッグベルト挑戦を要求する2人に対して、査定試合ともいえるカードが組まれていた。
 相手は武藤めぐみ&結城千種、団体の中堅に位置する若手タッグである。
「わかってるわね?」
 入場を終え、リングの上で相手のコールを待つ間、内田は上戸に対してそう念を押した。
「言われるまでもねーって。あんな奴らに手こずってるわけにはいかないんだろ?」
 ジューシーペアとしては、相手の2人を完膚無きまでに叩き潰すことで、
 改めて実力を証明すると共に、ゴールデンペアに勝利した勢いを持続させ、
 タイトル挑戦への弾みをつけたい。

 対するめぐちぐコンビの方はというと。
「めぐみ!」
「わかってる…!あんなのにいつまでも大きな顔はさせないわ」
「うん!それに、もしここで勝てれば…!」
 タイトル挑戦のチャンスは、自分達に巡ってるかもしれない。
 大器と期待されながらも、今では中堅に甘んじ、
 人気先行のきらいがあるという評も聞こえ始めているめぐちぐの2人にとっては、
 この一戦は今の境遇から抜け出す足掛かりを掴むための大きなチャンスと映っていた。


 ゴングが鳴らされ、内田対千種の組み合わせで試合が開始されるや、
 ジューシーペアは初手からいきなり千種を孤立させにかかった。
 ほとんど嫌がらせのように頻繁に交代を繰り返しつつ、
 上戸が投げ、内田が極める。
「千種ぁーっ!!」
(めぐみ…ッ!)
 青コーナーから精一杯に身を乗り出して励ますめぐみの声を聞きながら、
 リングの対角線上で千種は必死の抵抗を試みていたものの、
 ベテラン2人の猛攻を耐えるのがやっと、という様相だった。
「こら、ウルサイぞっ」
「うわっ!」
 トップロープに両手をかけて体を浮かせていためぐみに対して、
 突然向きを変えて走ってきた内田がエルボーの一撃。
「何すんのよ!?」
「あんたの出番は無いんだから、もう控え室に帰ってなさいよ」
 小さく舌を出して後ずさりしながら悪態をつく内田に対して、
 会場中から大ブーイングが送られる。
(からかい甲斐があるわねー)
 と、流石に怒っためぐみを眺めながら、内田がそんなことを考えていた時、
「おーい、後ろ!」
「ん?」
 上戸に声をかけられるまでもなく、
 内田は自分の腰に回った腕の感触で何が起るのかを悟った。
「ッやぁぁぁぁ!!」
 直後、千種が最後の力を振り絞って放ったバックドロップがリング中央で炸裂し、
 投げた方も投げられた方も大の字になって倒れた。
「千種っ!!」
「何やってんだよ、おい…」
 青コーナーでめぐみが必死にタッチを求めている一方で、
 赤コーナーでは上戸がパートナーの間抜けな有様に呆れかえっている。
 それぞれ重たい体と痛む後頭部を抱えた2人は、
 ほとんど同時に自軍コーナーへ這い出すと、そこから伸びている手に飛びついた。
「めぐみっ!!」
「後はよろしく、マッキー!」
 やや遅れてリングインしためぐみに対して、上戸はもうすでに突進を始めている。
「おうりゃあッ!」
 ほぼリング中央で振り回された上戸の剛腕をかわして背後に回ると、
 めぐみは相手が振り向くのに合わせてトラースキックを放った。
 が、掴まれた。
「甘いんだよッ!」
 そう叫んだ上戸は、両手で掴んだめぐみの右足首を踵の方向へ無造作に振り払う。
 この時を、めぐみは待っていた。
「甘いのはそっちよッ!」
 トラースキックの姿勢から、左脚を軸にし、上戸が右脚を放り出した力に対して、
 さらに自分で体を捻って回転を加えることでコンパスを回すようにして一回転しためぐみは、
 最終的にはやや体を浮き上がらせ、
 フライングニールキックのような形で上戸の右側頭部を蹴り飛ばした。
(おー、凄い技ね)
 エプロンに寝転がってこの光景を見ていた内田が、
 今まで見たことのない動きに思わず感心してしまうほど、
 相手の意表を衝いた素晴らしいカウンター。
 しかし、倒れた上戸をコーナー近くまで運ぼうとしているめぐみを見ると、
 内田はそのままゴロンと転がってリング下に消えてしまう。
「終わりよ!!」
 ここまでタッチを受けていなかったお陰でまだまだ元気一杯のめぐみは、
 絶好の位置に上戸をポジショニングすると、リング外を向いてコーナーに上った。
 途中で上戸が、音も無くむくりと起き上がったことには気づいていない。
「よっ!と」
 結果、体全体を躍動させてコーナーから舞っためぐみは、
 ちょうど後方への宙返りを終えたあたりで、
 待ち構えていた上戸によって両肩でキャッチされた。
「!?」
 驚く間もなく、ほんの少し上戸の体が沈んだかと思うと、
 次の瞬間には下から跳ね上げられ、マットの方を向いていたはずのめぐみは
 いつの間にか多数の照明で輝く天井を見上げていた。
「めぐ…」
「助けには行かせないわよ」
 相方の窮状を救うためにロープを跨ごうとした千種も、
 背後に忍び寄っていた内田によって捕まってしまう。
「さっきはよくもやってくれたな!倍返しだぜッ!!」
 肩の上でめぐみをうつ伏せから仰向け、アルゼンチンバックブリーカーの体勢に持ち直すと、
 上戸はそのままでめぐみの体を左右にゆっくりと振り回すようにして勢いをつけ始める。
(何をされてるの…!?)
 完全にされるがままになっているめぐみにとって、これは全く未知の状態だった。
「うりゃっ!!」
 左手を頭、右手を太股あたりに回していた上戸は、
 最後に右に大きく体を捻ってタメをつくると、
 その反動で腰を左に切りつつ右手を離してめぐみの足を開放。
 しかし頭部は離さず固定したままで後ろに思い切り倒れこんだ。
 女性2人分の体重のものとは思えないほど大きな落下音が響いた後、
 首と頭に大ダメージを負って動けないめぐみに対して、
 上戸は両肩を押さえ込みつつ大きく胸を張り、
 「どうだ」と言わんばかりのポーズで押さえ込む。
 そうこうしている間も青コーナーでは内田の嫌がらせが続いており、
 その結果カットを遅らせることで、
 ジューシーペアはまたしても目論見通りに試合を終えたのだった。

 
 勝った方の2人がマイクで言いたい放題言って帰った後のこと。
 「いつか必ず、あの2人に勝ってみせます……!」
 声を振り絞るようにして、健闘を称えてくれる観客に揃って応えためぐちぐに対し、
 観客はより一層暖かい拍手を送ってくれた。
 まだまだ焦る必要など無いことは、
 当人達よりも端から見ている他人の方がよくわかるようである。
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by right-o | 2008-05-14 23:31 | 書き物