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タイトルマッチの裏側

霧島対中森戦後の控え室

「………あ、社長。お疲れ様です」
「中森こそお疲れ様。いい試合だったよ」
「いい試合だった、というよりいい負けっぷりだった、でしょう?私がこの扱いということは、少なくとも後数ヶ月の間は霧島が王者のままということでしょうか」
「まあ…ね。最初は一時的な繋ぎのつもりだったんだけど、最近草薙やらパンサーやら技巧派のチャンピオンが続いたせいか意外に客ウケがよくてね。もう暫くはベルトを持っていてもらおうと思っている」
「そうでないと噛ませ犬役をやった意味がないんですけどね」
「そういうこと。トーナメントを勝ち抜いてきたベテランを一蹴したんだ、若年王者の格は随分上がったはずだよ」
「それで、未だシングルのベルトを手にしたことのない地味なベテランは来月どんな役回りなんですか?」
「タッグトーナメントに霧島と組んで出てもらう。王者といってもまだまだ試合は単調だからな。色々と教えてやってくれ」
「形は違っても、結局霧島の引き立て役ですか。いいですよ。私がやられるだけやられてから霧島にタッチして大逆転、って感じですかね」
「中森……。もしかして腐ってるのか?」
「別にそういうわけじゃありません。待遇には満足してますし、自慢じゃありませんがこれでも結構、ファンも多いんですよ」
「ああ、何かわかる気がするな。中森みたいな…職人タイプのレスラーを応援したくなる感覚」
「ただ…、今日もそうでしたけど、そういう熱心に応援してくれるファンの声援を聞くと負け役ばかりで申し訳ない気にもなります」
「ああ…」
「そういうファンの声が報われる日が、…いつか来ればいいんですけどね」
「中森、それは…」
「わかってますよ。冗談です。それに、最近のファンからは『あなたの派手な受け身が好きです』とか言われるんですよ」
「ははは…」
「シングルよりタッグで光る職人タイプの地味なレスラーなんて役回り、皆我が強いウチの団体で進んでやるのって私ぐらいですけど、逆にそんなところを応援してくれる人もいる。それで十分です」
「そう言ってもらえると助かるな。こちらとしても本当にありがたいと思ってるよ」
「はい…。それじゃあ社長、私はこれで」
「ああ、ゆっくり休んでくれ」
「ええ。それとさっきは引き立て役と言いましたけど、タッグマッチなら霧島以上に目立ってみせる自信がありますよ」
「うん。職人の技、楽しみにしている」
by right-o | 2007-08-15 00:02