レッスルPBeM 火宅留美 その4(1)

レッスルPBeMのリアクション04を掲載させていただきます。
すんません今頃……

※字数制限かかったので共通部分は省略させていただきました。
 STRさんのサイトでご覧ください

▼日本 福岡県福岡県博多区 さざんれあ博多 多目的ホール


VT-X、地元定期興行――
100人ばかりの観客の前で、レスラーたちが試合を行なっている。

「オラァーーッ!!」
「DEEEEYAAA!!」

容貌魁偉な長身レスラーと、小柄なガイジンレスラーが激しくシバき合う。
良く言えばケンカファイト、悪く言えば技術もへったくれもない、大雑把なドツき合いである。
反則パンチや顔面キックもいとわぬ荒々しいファイトは、VT-Xの売りの一つだが、新人同士だけになおさら容赦がない。
もっとも、同じ戦法なら、ガタイの大きい方――この場合は〈火宅 留美〉に分があるのが道理。

「ルーチェ! もっとキック! そう、ロー!! RUMI Can't Wrestling!!」
「ゴチャゴチャうるせえんだよっ、ニセ外人野郎!!」
「Bullshit!! Shut The Fxxk Up!!」
「ッ、何言ってるかわからねーけど、ムカッつく!!」

やたらと留美に絡んで、〈ルーチェ・リトルバード〉を援護しているコイツは、〈オースチン“プリティ・ガール”羊子〉。
いわゆる悪徳マネージャーというやつ。
ケガのためレスラーデビューを諦め、最近はこうしてマネージャー業にいそしんでいる。
留美とは天敵といっていいくらいに、ソリが合わない相手であった。
そんな妨害を受けつつも、最後はランニング・ビックブートでルーチェを沈めてピン。

(……くだらねェ)

勝ち名乗りを受けながらも、気の乗らない留美。
それも道理かも知れない。

(なにが丸坊主だ。……)

突然勃発した、VT-XとJWIの抗争。
といっても、彼女たち下っ端にはあずかり知らぬ話であり、気づけば更に『負けたら丸坊主』などというオプションまでついていると来た。
留美が思うには、この件は要するに

(VT-XがJWIに吸収される、ってアングルだろ)

だとすれば、形はどうあれ、JWIの下につくことになろう。
その方がギャラは良くなるのかも知れないが……
はした金のために、負け犬扱いされるのも業腹だ(しかも、自分が負けたわけでもないのにだ)。
それ自体、気に食わないところへ持ってきて、丸坊主の一件だ。

(とっととオサラバした方が利口だな)

そうも思うが、彼女もそこまで自分を高く買ってはいない。
今の時点では、そう高く買ってくれる団体があるとも思えぬ。
ツテがあるとすれば、

(……アイツ、か)

従姉にあたる《神楽 紫苑》。
【ワールド女子プロレス】のチャンピオンであり、最近はヒール軍団を率いて活躍している。
しかし、頭を下げるのもシャクにさわり、なかなか踏ん切りがつかずにいた。



そんなおり、留美にTV番組から出演オファーが来た。


▼日本 福岡県福岡市博多区 VT‐Xオフィス


「『仮面刑事アンタレス』? 何だソレ」
「私も良く知らないけど、子供向けのヒーロー番組みたいね~~」

《ナナシー神塩》からオファーの件を聞いた時は、正直、気が乗らなかった。

「なんだ、ガキ向けの特撮かよ。そんなしょーもないモン、出たくねーな。エセガイジンの奴に振ったらどうよ」
「あ~、羊子ちゃんには別のオファーが来てるのよね~。動物番組なんだけど」
「はァん……ま、ケモノ臭い番組より、マシか」

ギャラもまぁまぁ悪くはないので、結局受けることにした。


▼日本 東京都調布市 味の元素スタジアム


留美の役柄は、ヒーローに倒される怪人――の人間体。
そんなチョイ役であるからして、ちょっと顔を出してすぐ終わり……
かと思いきや、そうでもなかった。

(……こんなに待たされるのかよ)

出番自体はごく短時間なのだが、それまでの拘束時間が実に長い。

「ほんま、こんなに長いとは思わんかったわぁ」

とボヤいたのは、〈紫熊 理亜〉――
留美と同様、ゲスト出演で呼ばれているプロレスラーで、リングネームは〈Σ(シグマ) リア〉として知られている。
もっとも留美と違い、黙っていれば芸能人としか思われないほどの美貌であり、今回も重要な役柄なのであったが。
留美の従姉・神楽が所属する【ワールド女子プロレス】に所属するだけに、話題はそこそこあった。

「へぇ~、神楽サンの従妹なんや。そう言えば、ちょっと面影ある……ないわ。ごめん、勢いで言うてもた」
「さぞかし、苦労させられてるんだろ?」
「ソッ……ソンナコト……ナイケド……」
「…………」

そういいつつ目をそらしたのは、何ゆえであろうか。

「そういえば、ヴォルさんとこは大変らしいねぇ」
「まぁね……」
「丸坊主か~~。まぁ、ルミさんは似合いそうやし、ええんちゃう?」
「…………」

ええわけがない。




▼日本 福岡県福岡市博多区 VT‐Xオフィス


ともあれ。
『仮面刑事アンタレス』での熱演が評価された――のかどうか、分からないが。
別のオファーが舞い込んできた。

「アンタ、あのガイジン野郎のジャーマネだろ。俺に何の用だ?」
「ジャーマネ……っていうわけじゃないんだけどねぇ」

苦笑するこの男性は、〈オースチン・羊子〉が所属する芸能事務所【Ωプロダクション】のプロデューサーであった。
しかし今回の訪問は、羊子がらみではなく……

「実は、うちの事務所で、プロレスイベントを開催する予定でして――」

それに出演して欲しい、というのだ。

「フ~~ン……そりゃ、カネ次第だけど」
「えぇ、もちろん。これくらいで考えていますが――」
「……!?」

と提示された額は、驚くほど高額なもので、予想よりも0が一つ多かった。

「……詳しく、聞かせて貰いましょうか」

思わず、いつになく丁重な口調になったのも、無理はない。

プロレスイベント【AngeRing!!】――
Ωプロダクションが手がけるプロレス興行……だが、一般的なそれとは大きく異なる。
何しろ、所属アイドルやタレントを中心とした内容で、レスラーはあくまで添え物。
イメージ的には“バトル・ミュージカル”のようなものを考えているらしい。

「要は、リングで歌や芝居をやろうってことですか」
「えぇ、そんな感じですね」

……言わんとすることは分かる。

「それでですね、安宅さんには、こうした役どころでお願いしたいんですが」

と、企画書を渡される。

「なになに……? 〈アークデーモン留美〉? なんすかコレ」
「あぁ、アタケってなんか読み辛いでしょう? その方が分かりやすいかなって」
「…………」

若干イラッと来たが、まぁ、ドラマの役名のようなものだし……と割り切る。
しかし、よくよく読んでみると、流石に看過出来ないレベルの内容も出てきた。

「あのー……この、《帝王エンジェル》ですか。このヒトたちと闘えばいいってことで?」
「えぇ、そうですね」
「それで、最後はこっちが負ける、と」
「はい。もちろん」

プロレスは、いわゆる意味での競技、スポーツではない。
ゆえに、あらかじめ勝敗や試合内容を打ち合わせたうえで行なう――場合もあると聞く。
いかんせんVT-Xの場合、そういったものがあるのかないのか定かでない。
少なくとも留美に対しては、そういう“指導”は一度もないので、好きにやらせて貰っている。
よって、それはそれで問題はなかったが、

「この、『負けたら即レスラー引退、帝王エンジェルに弟子入りしてアイドルを目指す』……って言うのは?」
「あぁ、もちろんストーリー上の話ですよ。本当に引退していただく必要はありません」
「フ~~ン……」

どうやら、チョロい仕事のようだ。
それでこれだけのギャラを取れるなら、やらない手はない。

「分かりました。……やらせて貰います」
「っ、ありがとうございます! いや~、助かりましたよ。いろんなレスラーさんにオファー出したんですけど、断られちゃって」
「へぇ……?」

これだけの金額なら、十分やり手がいそうなものだが。

「いや~、羊子の言う通りでしたよ。貴方なら受けてくれるんじゃないかって」
「……っ、そう、ですか」

どうやら、ヤツからの紹介、のようなものらしい。
そう言われるといささかシャクではあったが……
まぁ、この場合はヤツにも、いささか、爪の垢くらい、これっぽっちくらいは、感謝してやらないでもない、と言っても過言ではない。かも知れない。
もっとも……
この感謝は、まもなく取り下げられることになったのだけれども。




▼日本 東京都渋谷区 Ωプロダクションレッスン会場


「貴方がアークデーモンさん?
 ……なるほど、悪魔っぽいビジュアルをお持ちですわね」

“共演”することになる《帝王エンジェル》との顔合わせ。
リーダー格の《クイーン東豪寺》の第一声がそれであった。

「うんうん、地獄の底から這い上がってきたばっかりって感じ~☆ 超ウケる~~♪」
「……お二人とも、事実を素直に口にするのはやめた方がいいですよ」

《ミストレス朝比奈》をたしなめたのは《エンプレス三条》であるが、あまりたしなめてもいないかも知れない。

「……どーも」

頬を引きつらせた留美であったが、これもギャラのため――とせいぜい愛想笑いを絶やさずにおく。

「最初に言っておきますけれど――」
「え?」
「わたくしたち、プロレスなど、やる気はありませんの」

東豪寺が断言した。

「……っ、そんなこと、言われたって」

仕事は、仕事ではないか。

「わたくしたちはトップアイドルですのよ? それがどうして、あんな野蛮な真似をしなくてはいけませんの? 意味が分かりませんわ」
「…………」

それは本人たちの勝手だが、留美に言われても困るところだ。

「こんな社長の思いつきのようなイベントで、ケガでもしたら馬鹿馬鹿しいですわ。どうせ貴方も、真面目にやる気はないのでしょう?」
「っ、そりゃ……まぁ」

カネさえ貰えるなら、それでいいと思っているのは確かだが。

「社長がうるさいから、やるにはやるけどぉ~~。痛いの嫌だし、なんかいい感じに誤魔化せない~?」
「は、はぁ……」
「え~と、台本だと…………」



<メインイベント>

 《帝王エンジェル》
 VS
 〈アークデーモン留美〉

帝王エンジェル、最初に入場。持ち歌『ゆるしてタイキック』を披露。

Q東豪寺:プロレスなんて、ちょっと練習すれば楽勝ですわ。
M朝比奈:そうそう♪ 簡単だよね~~☆
E三条:……歌や踊りよりは、ずっと楽ですね。誰にでも出来ます。

(以下アドリブ。プロレスをバカにする発言)

AD留美:おいお前ら、適当なこと言ってんじゃねーぞ!

(アークデーモン登場。場内を威嚇しながらリングに上がる)

AD留美:そんなに簡単だって言うのなら、俺が相手してやるよ。
Q東豪寺:上等ですわ。ちょっぴり図体が大きいからといって、勝てると思わないで。

(以下アドリブで舌戦。残りの尺次第で調整)

AD留美:ゴチャゴチャうるせえ! まとめてかかってこいよ。

(試合開始。3人がかりで挑む帝王エンジェルだが、全く歯が立たない。
 留美、適当に痛めつける)

AD留美:おい、いいザマだな! ファンの前で恥ずかしくねーのか。
Q東豪寺:くっ! ファンのみんな、わたくしたちに力を貸して!

(観客、帝王エンジェル応援グッズ(物販で販売)を掲げて励ます。
 復活した三人、合体攻撃で留美を倒す)

Q東豪寺:これがアイドルの力ですわ。
M朝比奈:ファンのみんなの応援があれば、あたしたちは無敵なの☆
E三条:……ユニヴァース。
AD留美:すみませんでした。どうか、私もアイドルにして下さい。(土下座)
Q東豪寺:仕方ありませんわね、ミュージック・スタート!!

(四人そろって持ち歌『ラッキー☆シスター』を歌う。留美のヘタクソな踊りに場内爆笑。ハッピーエンド)



「まぁ、話の流れはともかく……『適当に痛めつける』と言われましてもね。貴方、どうするつもりですの?」
「そりゃ……投げ飛ばすとか、張り手したり、とか」
「えぇ~っ? 痛そぉぉ~~~」
「……アイドルは……顔が命なんですけど」
「は、はぁ……」

……この辺でようやく、留美は他のレスラーがこのオファーを避けた理由を悟った。

(こ、こいつら……タチが悪い!)

「そうですわね……貴方、『手から毒電波が出る』みたいな設定にしなさい」
「……はぁ?」
「あ、なるほど~。それを浴びてるってテイで、あたしたちが苦しむフリすればいいんだ~~」
「はっ、はぁ……」

むしろ、こっちの頭が痛くなってきた。
もはや“プロレスごっこ”の域ですらなくなりつつある。

(……ま、いいか)

楽してカネが手に入るのだから、少々のことは我慢しよう。
よしんばこれで興行がコケたところで、自分の知ったことではないのだ。





▼日本 東京都江東区有明 有明スポーツアリーナ


かくして、【AngeRing!!】開催の当日――
人気アイドルが多数出演するとあって、会場は2万人近いファンで埋め尽くされている。

(……っ、こんなデカいハコなのかよ)

これまで多くても1000人規模の会場でしか試合をしたことがない留美にとっては、大変なプレッシャーと言える。
おまけに、いつものような力任せのやりたい放題ではなく、台本通りに進行させなければいけないのだ。
更にプレッシャーなのは、この興行、生中継でTV放映されるということ。

「やぁ、君が妖かしのカラミティ・レディの弟子だね」
「……っ」

控え室で硬くなっていた留美に声をかけたのは、【東京女子プロレス】の麗人キャラレスラー《ミシェール滝》。
留美にとっては、レスラーとしてより、TVでのタレント活動の方が印象が強い。

「デビューし立てでいきなりメインとは大変だろうけれど――頑張ってくれたまえ」
「は、はぁ」
「私たちがいくら盛り上げた所で、メインが失敗しては、何もかも台無しだからね」
「……っ」
「そうプレッシャーをかけるなよ、翔子。彼女はルーキーだぞ」

そうフォローを入れてきたのは《ロイヤル北条》。
【日本海女子プロレス】を率いるパワーファイター。
この二人はかねてから知り合いで、今回は久々にタッグを結成するというわけ。

「フフッ、それもそうだ。我々の所の子鹿ちゃんたちも、まだまだだからね。健闘を祈るよ」
「……どーも」


――そして、運命のメインイベント。


<メインイベント>

 《帝王エンジェル》
 VS
 〈アークデーモン留美〉


場内の大型ビジョンに、これまでのいきさつ――留美が記者会見で大暴れ(もちろんアイドルに手をかけたりはしない)したり、帝王エンジェルのライブに乱入して、“悪魔的な”歌を披露したりした顛末――が流される。
アイドルの誇りをかけて、あの悪魔を倒す! と気炎を上げる帝王A。
そして台本に従い、帝王Aの入場、一曲披露……と進行していく。

『お前ら! 好き勝手なこと言ってるんじゃねーよっ』

ここでようやく、〈アークデーモン留美〉が登場。
むやみにゴチャゴチャした鎧のような甲冑を頭からスッポリ着せられ、ひどく視界が悪い。
おかげで客席の様子もよく分からないので、緊張せずにすんだのはまだしもかも知れなかった。
リングに上がり、いざ甲冑を脱いで見ると――

「……う……ッッ」

大観衆に囲まれていることを改めて実感し、思わず、足がすくむ。
マイクを手に取ったものの、

「――――ッッ」

台詞が完全に飛んでしまい、何も出てこない。
妙な間が生まれ、場内がザワつき始める。

『――フン、何かおっしゃりたいのかしら? これだから、脳みそまで筋肉で出来てるプロレスラーなどとは、絡みたくありませんのに――」

とっさに東豪寺がアドリブを入れ、会場が笑いに包まれる。

『……っ、お、お前ら、俺が、相手、してやる……よ』

普段なら難なく出来るマイクが、尻すぼみになってしまう。

――何だソレー? 全然迫力ねーぞー!!
――やる気あんのかー、アークデーモン!!

客席からのヤジに、いつもなら反撃してやる所だが、そんな余裕もない。

『いいですわ、そんなにお相手して欲しいのなら!
 アイドルの力、見せて差し上げます――――』

強引に話を打ち切り、ゴングを要請する東豪寺。
流石に、この辺の肝のすわり具合は尋常ではない。

しかし、いざ試合――となっても、留美は精彩を欠いた。
当初の打ち合わせ通り、『両手から毒電波を出し、相手を苦しめる』という展開に持っていくも、息が合わず、グダグダに。

――何やってんだ? 意味わからーん!
――プロレスやれ、プロレスーー!!

観客席からの容赦ないヤジに、いよいよパニックになる留美。

「う、ウガアッ!!」
「きゃうっ!?」

思わず、朝比奈を力任せに突き飛ばしてしまう。

「ちょっ! 何してるんですのっ!!」
「っ、う――」

緊張が極限に達し、棒立ちになってしまう。

「うっ……うわあああああ……っっ!!」
「……ちょっ、ちょっと!? 貴方……何処へ!!??」

…………




▼日本 福岡県福岡市博多区 VT‐Xオフィス


「あはっ! あはははははっ! イッツ・クール!! 最高だわアイツ、あっはははははは!!」

〈オースチン・羊子〉は腹を抱えて爆笑していた。
【AngeRing!!】の生中継を観戦中、問題のメインイベント。
よもや、こんな展開になるとは――斜め上だった。

「?? ルミ、ドウシテ、逃ゲタ??」

ルーチェなどは、理解に苦しんでいる。
もとより理由は当人にしか分からないが、

『分不相応な仕事をやろうとした報いってこと。あ~、笑った笑った』

番組上では、まさかの留美逃走に、さしもの《帝王エンジェル》も困惑を隠せぬ様子が流れている。

(全国生中継でこの醜態……アイツも流石に、戻ってこれないかもね)

ちなみに、AngeRing!!の方は。
間もなく、急場をしのぐべくヒールキャラへ変身した滝と北条が登場、アイドル相手に見事な立ち回りを披露、きっちりと場内を沸かせ、クライマックスを盛り上げてみせたのは、流石であった。





リングからの『逃走劇』の後……
留美は会場からも逃げるように去り、博多行きの新幹線に飛び乗った。

(クソッ……クソッタレが……ッ)

あんなことになるくらいなら。
いっそ、収集がつかないくらいに暴れてやれば良かった。
カネのために自分を殺したあげく、あんな赤っ恥をさらす羽目になるとは。

博多に戻っても、VT-Xの寮へ帰る気にはなれなかった。
どの面下げて顔を出せよう。

(さぞかし、あのガイジン野郎は大喜びだろうぜ……ッ)

羊子の件を思い出すと、ハラワタが煮えくり返る。
だが、オファーを受けたのは自分であり、その点では誰を恨みようもない。

チラリとネット関係を見てみると――
案の定、大バッシングを受けている。


――アイドル相手に試合放棄、水着姿のまま会場から逃走!!
――プロレスラーの恥、二度とリングに上げるな!
――アイドルから逃げるプロレスラーってwwww
――アークデーモンは にげだした!!(笑)


世間からは失笑を、業界からは大ヒンシュクを買っていた。

「クソッ! 好き勝手、抜かしやがって……ッ」

と、ケータイに着信。

「っ? 何だ……」

登録されていない番号である。
時が時だけに、ややためらわれたが、留美は大きく息をついて、着信ボタンを押した……


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by right-o | 2012-08-19 17:54 | 書き物