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『エンジェルカップ』最終日第六試合 ジョーカー&真帆VSマッキー上戸&ラッキー内田 中編

「上戸、任せたわ!」
「おう、任されたぜっ!」
 待望のタッチを受けて飛び出した上戸は、
 朦朧としながら赤コーナーに向かって這い進むジョーカーの首根っこを掴んで強制起立。
 ダブルアームスープレックスで軽々と投げ切り、フォール……には行かず、
「お返しだぜ!」
 控えていた真帆をラリアットで叩き落とした。
「何するんだっ!?」
 怒ってリングに入ろうとする真帆を、レフェリーが必死にロープ際で食い止める。
 先ほどまでとは完全に逆の状況が現出したところで、ダメージをおして内田が入って来た。
「いいのかよ?」
「ええ、お返しの時間だわ!」
 上戸がジョーカーの両足を掴んで振り回し、徐々に速度を上げて行くのを、
 内田はニュートラルコーナーで観察。
 最高速に達したのを見計らい、側頭部へのドロップキックをやり返した。
 更に二人掛かりで引き起こし、ダブルのブレーンバスター。
 真帆に見せつけるように高々と持ち上げ、勢いよくマットへ叩きつけた。
「お前ら、卑怯だぞっ!」
 自分たちのことを棚に上げて抗議する真帆を完全に無視し、
「おいおい、もう決めちまうか?」
「そうね、大した相手じゃないわ!」
 上戸と内田はさっさと仕上げにかかる。
 ぬいぐるみか何かのようにジョーカーをあっさりと持ち上げ、パワーボムの体勢。
 そこで向かい合った内田が力一杯垂直に飛び上がり、ジョーカーの両肩に手をかけつつ開脚して尻餅をつく。
 リングを揺らしたダブルのパワーボムに、観客席から大きなどよめきが沸き起こった。
 そして、完全にKOされたジョーカーを上戸が思い切り押さえ込む。
 もはやジョーカーはピクリとも動かなかったが、内田の妨害をくぐり抜けた真帆のカットがどうにか間に合った。
「起きろぉッ!!」
 真帆は上戸を突き飛ばしてジョーカーに馬乗りになり、その頬に向かって力一杯の張り手。
「ぶふぅっ」
 手形がはっきり残るほどの一撃は、トドメになったかと思われた。
「お前は黙って見てろ!」
 上戸が真帆を引き離して場外に落とし、今度こそ内田が釘付けにする。
「観念しなっ!」
 再度、上戸がジョーカーを持ち上げてパワーボムの体勢。
 こうなっては、フォールが取れるまでエンドレスで叩きつけられることになる。
 しかし真帆の一発が気つけになり、ギリギリのところでジョーカーが目を覚ました。
「うおおおっ!」
 最初のパワーボムを投げっ放しのフランケンで切り返して見せ、赤コーナーへ飛びつく。
「悪い、しばらく任せる……ッ!」
「やってやるぞ!」
 すかさず内田を振り払った真帆が駆けつけ、タッチ成立。
 茶色の長髪を靡かせてロープを飛び越えると、真帆は一直線に上戸へ突進。
 上戸はこれを肩口で受け止め、ロープを指さした。
 その通りロープに走ってタックルを仕掛けてきた真帆を、やはり仁王立ちで受け止める。
「お前、もう一回行け!」
「次はそっちが行け!」
 二人それぞれがロープを指さした末、結局互いにロープへ飛ぶ。
 リング中央で激突した二人は少しよろけたが、それを隠すようにすぐ歩み寄り、額をつけて睨み合う。
 そしてどちらからともなくヘッドバット合戦が始まり、それに段々とナックルパートが混じり、
 終いにはほとんどショートレンジラリアットのようなハンマーブローで殴り合っても、互いに譲らない。
「ふぅ、ふぅ……」
「はぁ……くっ……」
 相打ちから同時に手が止まり、腕をだらりと下げて見合う。
((負けるかっ!))
 真帆が更に振り回した右腕をかいくぐり、上戸は真帆を両肩の上に担ぎ上げた。
 が、背骨が軋みを上げる前に真帆は上戸の背中を滑り降り、振り向いた上戸の首に両手をかける。
「ぐ、おお……」
「ふんぬッ!!」
 歯を食いしばり、真帆は首を掴んで上戸を投げ切った。
 しかし、ロープに飛んで追撃をかけようとしたした真帆へ、上戸はカウンターのニーリフト。
 体をくの字に曲げて悶絶した真帆は置いて、ここで上戸は内田へタッチ。
 まずは膝立ちの真帆の足へ鋭いローキックを放ち、真帆がこれに耐えて強引に立ち上がった瞬間、
 下段を意識させて無防備になった顎へ的確に決まるローリングソバット。
「うわっ!?」
 内田が出てきたことで、試合の流れがぐっと引き締まった。

by right-o | 2010-09-06 00:55 | 書き物