『エンジェルカップ』八日目第三試合 キューティー金井VS小縞聡美

「リングに着くまで耳を塞いでいること」
 フェイスペイントをした変な外国人に言われたアドバイスを、金井はちゃんと守った。
「ふぇっ!?」
『チッ』
 その結果、花道の途中で突然炸裂した花火に驚きつつも、無事にリングインすることができた金井を見て、
 誰かが発した舌打ちの音をマイクが拾った。
(鬼かこの人……)
 何事も無かったように実況を続ける霧子に、小川は今更のように呆れる。
 明らかに霧子は試合前から金井を泣かしにかかっていたのだ。
『戦うウェイトレス対泣き虫アイドルレスラーの一戦、勝敗は抜きにして楽しみな試合ですね』
『とはいえ、金井さんは自分より遥かに大きな朝比奈さんを破っていますから、
 わからないかも知れませんよ』
 心の中で、小川はこっそり金井に声援を送っていた。


 果敢にも手四つを挑んだ金井は、一瞬でへなへなと崩れ落ちた。
「ううう……」
「ど、どうしたんですか?」
 あまりにあっさり膝を折った金井に、上から押さえつけながら小縞が不振がる。
 腕力の差はあまりにも歴然としていた。
 その後、チョップで打撃戦を挑めば数倍のお返しを受け、
 後ろからスリーパーを仕掛ければ、両手で頭を掴んで前に投げつけられたりしながらも、
 金井はどうにか食い下がる。
 そして小縞のラリアットを掻い潜ってロープの反動を受け、ジャンピングネックブリーカーで引き倒した。
「えいっ、えいっ、えいっ!」
 立ち上がってくる小縞へ勢いのまま三連発。
 ついに流れを掴んだかに見えた金井に、客席はかなりの盛り上がりを見せる。
「よ~しっ、やっちゃうんだからね!!」
 声援に後押しされた金井は、一気に必殺のノーザンライトスープレックスの体勢へ。
 が、小縞の脇に頭を差し入れた瞬間、金井の体は軽々と宙に浮き上がった。
「は~い、決めますよ~!!」
 あっさりとブレーンバスターで金井を投げ捨てた小縞は、手拍子を要求しながらコーナーに上る。
 その後、たっぷり数十秒かけて客席全体に手を振ったあと、小縞が跳んだ。
 空中で一度全身を丸めたあと、逆に思い切り体を反ってお腹を突き出す。
「負けないんだからッ!!」
 すっかり回復していた金井は、すかさず膝を立てて剣山で迎撃。
「うっ」
 無防備な腹部に膝が突き刺さった小縞は、悶絶し、動けない。
 しかし、膝で受けた金井の方も、飛んできた小縞の勢いがそのまま伝わり、
 体育座りのまま仰向けになったような形で上から圧縮された。
「お、重いよ~……」
 結果、フロッグスプラッシュを剣山で迎撃した姿勢のままで3カウントを聞くことになった。


×キューティー金井 (9分30秒 フロッグスプラッシュ) 小縞聡美○


[PR]
by right-o | 2010-08-21 14:38 | 書き物