エンジェルカップ 幕間
ドリンクバーの無い、やや高めのファリミーレストランの四人席で、
窓側に座ったジョーカーは腕組みして宣言した。
昨日の試合前後に色々あり、真帆にまあステーキぐらい食べさせてやろうかと思って外に出たのだが、
「お供しますよ、先輩」
「子供が騒いでるような店はちょっと……」
とか言いながら、鏡と小川が後ろからついてきたのだった。
(まあ、小川はいいとしよう)
恐ろしく上下関係の希薄な環境にいるクセに、こういう時はここぞとばかりに年上を立てる小川のことは、
ひとまず置くことにした。
「なんでお前がついて来るんだよ……」
その辺の安い店で済ませようという思惑を破られたジョーカーは、
髪を気にしながら澄ましてパスタを啜る鏡へ露骨に嫌な顔をして見せる。
「仲間と親交を深めようとするのが、何かいけませんの?」
寒気のするようなことを言う。
こういう時は、よほど機嫌が良いか悪いか、多分良いのだろう。
「あ、そう……」
気持ち悪くなりそうなので、ジョーカーはさっさと会話を打ち切った。
しかしまあ、と、ジョーカーは自分の前にあるテーブルの上を見やる。
二口で一枚を食べきるペースの真帆のステーキが四枚と、何だかわからないご飯ものが二皿。
いきなりチョコレートサンデーを注文した小川はデザートのみかと思いきや、
同時にハンバーグを頼んでいるし、さらに鏡は鏡で、
カルボナーラと巨大なハニートーストを同時に食べ進めていたりする。
そんな混沌と化したテーブルの隅で、ジョーカーはひっそりとピザを齧っていた。
(日本のプロレスラーって、みんなこうか……?)
マンガのように皿が積み上がることはない代わりに、皿を下げにくる店員の目がちょっとイタい。
(いや、そんなことより)
「誰か、中森にも声をかけてやれよ……」
日本に来てから、すっかり気を使えるようになってしまったジョーカーであった。