『エンジェルカップ』初日 試合前

 試合開始二時間前。
「「暑い……」」
 地下鉄御堂筋線のなんば駅に着いたジョーカーと真帆は、
 早く着き過ぎて余った時間を持て余した。
 昨日は全員同じ車で送ってもらったため、初めて自力で行く際に迷う時間を考慮したのだが、
 意外にもあっさり発見できてしまった。
 とりあえずなんばパークスに寄ってみたあと、
 そこから体育館に向かう途中で見つけたMACもといマクドにて時間を潰しているところである。
「まだ二時間もあるぞ……お」
 二階席でアイスコーヒーを啜りながら通りを見下ろしていたジョーカーは、
 昨日のセレモニーで見かけた顔が通って行くのを見つけた。
 あの顔の強張りようからして、これから試合が組まれているのではないだろうか。
「若いねぇ」
「……暑い」
 ジョーカーの隣で、真帆はカウンターに突っ伏していた。
 狐の尻尾に例えられる豊かな長髪が、この炎天下で非常に暑苦しい。
「暑いぞ……」
「お前今日そればっかりだな」
 ダレきっているが、入店の際にためらわずメガ何とかいうのを注文したあたり、
 食欲はいつも通りなので多分大丈夫だろうとジョーカーは思っている。
「さて、まあ今日は試合も無いからホントは行く必要も無いんだろうけど、
 まあ緊張してるヤツらの顔でも……」
「zzz……」
 寝息を立て始めた真帆の背中に氷の塊を滑り込ませ、ジョーカーは店を出た。

 どこから入っていいかわからなかったので、
 ジョーカーたちは当日券売り場に並んでいる客の横を堂々と正面から入って行った。
 誰、とはすぐに気づいてくれないが、明らかに目立つ存在ではあるため、
 ちょっとだけ騒がしいことになったが、無視した。
「立地は、多分いいんだろうな」
 街中にあり、交通の便がいい。
 理想的な会場ではあるが、鏡などに言わせるとあまりにも「体育館」然とし過ぎているらしい。
 そこが外国人のジョーカーなどには面白く映った。
 剣道場やら柔道場をふらふらと見学したあと、ようやく階段を下りて地階へ。
 グッズ売り場等を用意している間を縫って、試合が行われる「別館」と呼ばれるスペースに到着した。
(ふーん)
 普通、という以外に感想は無い。
 2,000人収容する規模があると聞くと、ちょっと小さいような気もする。
(ま、こんなもんかね)
 と、ジョーカーが改めて選手を控え室を探そうとした時、
 会場の外を慌てた顔で駆け抜けていく霧子が見えた。
 それに続くスタッフの悲鳴。
『誰か、TNAの方はいらっしゃいませんか!?』
 そして、いつの間にか真帆がいなくなっていることに気づく。
(………)
 その時外では真帆とファンとの交流会が徐々に規模を大きくし始めていたことは、後で知った。
 とりあえず、嫌な予感がしたジョーカーはそ知らぬ顔でバックステージに入って行った。

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by right-o | 2010-08-08 16:00 | 書き物