「メイド・イン・デトロイト」 ジョーカーレディ&フォクシー真帆VS橘みずき&藤原和美

 小川と栗浜の退場が終わらない内、会場に3発の銃声が鳴り響いた。
 それがジョーカーレディ&フォクシー真帆入場の合図である。
 揃いのホットパンツと胸元ギリギリまで裂け目の入ったTシャツ、
 それに真帆はバンダナを頭に巻き、ジョーカーは覆面のようにして顔の下半分を隠している。
 六角形をしたリングにたどり着くと、エプロンに立ったジョーカーが客席を向いて背中を反らし、
 その肩口に頭を乗せるようにして真帆がリング内から抱きついた。
 格好も仕草も組み合わせも、何から何までよくわからないタッグであった。
 対するはリーグ戦出場に名乗りを上げたもう一つのチーム、藤原和美&橘みずき。
 こちらはわかりやすく熱血系の似たもの同士である。
 
 ジョーカーとみずきで始まった試合は、まずアームホイップで幕を開けた。
 互いに突進してきた勢いを利用して一度ずつ投げ合い、
 さらにジョーカーは飛びながら足でみずきの腕を絡め取っての一発。
 対して立ち上がったみずきはトーキックから腕を取ったが、ジョーカーは自ら前転してマットへ横になり、
 一瞬体を縮めてからみずきの顔面を両足で蹴って抜け出す。
「うッ!」
 思わず後ろに倒れたみずきだが、即座に両足を頭の方まで持ち上げ、反動をつけて立ち上がった。
 そして真正面で同じように立ってきたジョーカーと、ドロップキックの相打ち。
「むぅ……!」
「フフフ……」
 空中で四本の足が交錯したあと、二人は観客の拍手の中でじりじりと自陣へ退いて行った。
「藤原、行きますッ!!」
「うおおおおッ!!」
 続いてほぼ同じ体格の真帆と藤原が、リング中央で肩口から激突。
「来いッ!」
 どちらも引かないぶつかり合いから、藤原がロープを指して挑発する。
 これを受けてロープへ飛んで帰ってきた真帆をマットに身を横たえてかわし、
 さらにもう一度跳ね返ってきたところを藤原はフロントスープレックスで鮮やかに放り投げた。
 が、投げられた勢いのまま立ち上がった真帆が、強烈なショルダータックルのお返し。
「どうだッ!」
 まずは両チーム互角の立ち上がりであった。

 個々の力に差が無いとすれば、タッグ戦でものを言うのは連携ということになる。
 乱戦になるにつれ、一時は藤原とみずきがそれを見せつけるかとも思われた。
 エプロンにいた真帆をみずきがフライングニールキックで叩き落し、
 正義の味方タッグは標的を悪役っぽい方に定める。
「「ハイッ!、ハイッ!、それッ!!」」
 左右からジョーカーの体を挟み込む形で、ミドル、ミドル、そしてローを膝の裏に打ち込んで体勢を崩し、
「「せぇ~のッ!!」」
 の掛け声で左右同時のトラースキック。
 が、頭を挟み潰される寸前、ジョーカーは自ら後ろに転がって難を逃れた。
「りゃああああッ!!」
 同時にエプロンからトップロープに飛び上がった真帆が、リング中央の二人へ両腕でのラリアット。
 まとめて一気に薙ぎ倒すことに成功すると、ここから真帆ジョーカー組は一気に勝負をかけた。
 軽量のみずきを捕まえた真帆は、タイガードライバーの体勢から一気に持ち上げ、
 仰向けのみずきを自分の右肩に乗せてから場外に落ちた藤原へ向き直った。
「ちゃんと受けろ!」
「わ、ちょ……っ!?」
 そのままリングから場外へ向けてみずきを投下。
 重さを感じさせずふわりと宙を舞ったみずきは、見事にタッグパートナーを背中で押し潰した。
「さあ、お前はこっちだ!」
 みずきを受け止めざるを得なかった藤原は、さらにジョーカーに引き摺られて強制的にリングインさせられる。
 しかし藤原は諦めない。
「まだまだまだぁッ!!」
 引き起こそうとしたジョーカーの手を振り払うと、左右の張り手を連打して渾身のハイキック。
 これは屈んで避けられるも、さらに続けて組み付こうとしたところで、
 目の前のジョーカーがいきなり飛び上がった。
 リープフロッグのように垂直に飛んだジョーカーの背後から、身を屈めた真帆が突進してきていたのだ。
 ジョーカーの開いた両足の下を猛スピードで通過した真帆は、藤原の腹部に肩口から突っ込んで引き倒した。
「さあ、派手にいこうか!!」
「おうっ!」
 あとは仕上げを残すのみとなリ、ジョーカーはコーナーの一つを指し示す。
 真帆は、そこまで引き摺っていった藤原をおもむろにパワーボムで持ち上げると、
 コーナーに背を向けたままで、コーナーに飛び乗ったジョーカーへ近づいた。
「よく見ているがいい!皆、こうしてやる!!」
 客席を向いて首を搔き切るポーズを見せたジョーカーは、真帆の上に乗せられた藤原の頭を、
 自分の左肩の上に乗せて固定。
 そしてコーナーを蹴って後ろに宙返りし、藤原へいわば雪崩式の不知火を敢行。
 さらに真帆は開脚しながら尻餅をつき、こちらはパワーボムで藤原の体を叩きつける。
 真帆&ジョーカー、オリジナルの連携技が完璧に決まった。


「さて、我々がこの団体を代表するのは当然として。願い事な……。
 何でもいいんだろう?なら、メキシコにいるカラスへ挑戦させてもらおうか」
「メキシコ?なんだそれは?うま……」
「ああ、うまい。メキシコはうまいぞ。一緒に行こうじゃないか」
 ほとんど思いつきで無茶を言ってみただけの願いごとだったが、
 ジョーカーは予想通りの反応を示したパートナーへ即座に調子を合わせた。
 単純さもここまでくると、逆に組んでいて楽なものである。
 これはこれで、得難い相棒と言えるかも知れなかった。

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by right-o | 2010-06-12 00:48 | 書き物