「アルマゲドン・ヘルインアセル」Ⅱ 美沙VSみことVS美冬VS小鳥遊VS理沙子VS南

 六人のレスラー達を囲んでいた鋼鉄の檻は、一面が3×3mの金網を横に四つ、それを縦に二列重ねて造られている。
 この大きさは、リングをすっぽりと覆ってまだ金網とリングとの間に場外乱闘ができるスペースを残すもので、
 他の試合ではちょっと見られない。
 加えて上には天井が設けられていて、この檻が、脱出を想定したものではなく、
 中に入った人間を閉じ込めることで、逃げ場の無い戦いを演出するためのものであることを物語っている。
 そのため、選手達が全員内側に入ったあと、すぐに入口の扉へ外から鍵がかけられていた。
 が、小鳥遊の体重と突進力に負け、入場ゲートから見て右側にある一面の内で最も手前にあたる金網が一枚外れてしまう。
 その3×3の鋼鉄製の網目の上で、チャンピオンであるはずの美沙が目を回しているのだった。

「うぅ~……」
 客席側に倒れ、場外フェンスに引っ掛かって斜めになっている金網の上で美沙が意識を取り戻した時には、
 檻の内側に誰もいなかった。
 全員が、小鳥遊の壊した部分から外に出て戦っている。
 どこから持ってきたのか、客席の方では、
 みことが木刀を振り回してイスを持った南とやりあう、という珍しい絵が展開されていて、
 その傍では理沙子が一時的にダウンしていた。
 ちなみに、この試合に反則裁定は存在しない。
(あれ…?)
 はっきりしない頭を左右に振って周囲を確認してみると、人数があと二人足りていない。
『うおおおおっ!?』
 その時、突然周囲からどよめきが起こって、寝ぼけていた美沙の頭を一気に覚醒させた。
「ななななっ何をしているのですっ…!?」
 美冬と小鳥遊が、地上6mの天井の上に登って戦っていた。
「おるぁっ!」
 両手で掴んで固定した美冬の頭に小鳥遊が思い切りヘッドバットを決め、
 くらった美冬はたまらずよろけて後ずさる。
 が、美冬も一見すると冷静な外見に似ず気が強い。
「舐めるなぁッ!」
 すぐに同じ技をやり返すと、さらに左右の掌底を顎に入れて頭を揺さぶった。
 殴り合いに持ち込んでしまえば美冬の方に分がある。
 丸太のような両腕を掻い潜りながら的確に打撃を決め、一気に小鳥遊を後退させた。
 その様子を下から「おおー」という感じでただ見ていた美沙の頭に、ここで嫌な予感が浮かんだ。
「これは…きっとこのままじゃマズイのですっ!!」
 急いで乗っていた金網から下りると、それを引っ張って位置を調整しながら客席の方へ呼びかける。
「誰か上着を!クッションになりそうな物を寄越せです!!」
 同じ予感を感じ始めていた客席から、すぐにコートやジャンバーが集められると、
 美沙は急いでそれを金網の上と下に敷き詰め、なんとか急場の救命道具を作った。
 その様子が見えていたのか、それとも頭に血が上って他人がどうなるかということまで考えられなかったのか、
 天井にいる美冬の攻めには、一切の容赦が無かった。
 下に美沙がいる側を背負った小鳥遊へ向け打撃で押しまくり、
 文字通り後が無くなった小鳥遊の振り回した腕を屈んで避けると、
 そこから一気に伸び上がって、トドメとばかりに顔面への雷神蹴。
「うお、お、おっ…!?」
 小鳥遊の顎が上がり、後ろへ二歩下がったところで踵が空を切った。
「来たぁっ!?」
 美沙が用意したトランポリンの上へ、小鳥遊の巨体が落下。
 クッションのせいで音は立たなかったが、上着を跳ね上げて落ちてきた、その見た目のインパクトは絶大だった。
「ふうっ…」
 流石に気を失っているものの、とりあえず怪我が無さそうな小鳥遊を見て、
 美沙と周囲の観客はほっと胸を撫で下ろす。
(こんなふうには、なりたくないのです…っ)
 次第に激しさを増してきた潰し合いの真っ只中で、
 当初の目論見通り一番余力を残しているはずの美沙は、次第に生き残ることを考え始めていた。

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by right-o | 2009-01-05 17:16 | 書き物