「イリミネーションタッグマッチ」Ⅱ

サンダー龍子・マイティ祐希子・ビューティ市ヶ谷・ソニックナイト・フォクシー真帆
VS
桜井千里・草薙みこと・伊達遥・カラミティ十六夜

+技「ジャイアントスイング」「ロメロスペシャル」

「私に生意気な口を利く者はこうなるんですのよ!おーほっほ…」
 小早川がノックアウトされたあと、ソニックと代わった市ヶ谷の高笑いが終わらない内に、
 赤コーナーにいる龍子たちに向かって若手軍が一斉に逆襲をかけた。
 みこと、十六夜がコーナーに控える四人を場外に叩き落しつつ、
 中央に引き出した市ヶ谷に伊達が左ハイ、桜井が右ハイで頭を左右に揺らし、すぐに役目を代わると、
 みことの兜落しでダウンさせたところで十六夜が喉を掴んで立たせ、
 そのままチョークスラムで叩きつけてカバー。
 他の三人が必死でカットを阻止する中、一分も経たず状況を五分に戻すことに成功した。
「うわ、呆気なっ。あとでバカにしてやろうっと」
「あれだけくらえば仕方ないだろ。次はあたしが行くぞ!」
 まだまだ余裕を崩さないベテラン勢から龍子が出てくると、桜井が自分からタッチを求めて十六夜と代わる。
 事実上の大将同士の顔合わせだった。
「っ!」
 余程鬱憤が溜まっていたのか、桜井は一直線に龍子へ向かい、いきなり肘を振るって飛び掛った。
 次いで首相撲に捕えて膝を連打し、勢いに任せてニュートラルコーナーまで押し込んでいく。
「チッ、舐めるなっ!!」
 龍子がこれを嫌い、無理矢理突き飛ばして間合いを空けても桜井は怯まない。
 構わず距離を詰めながらの左ローキックから、右のミドルキックを脇腹に突き刺した。
(っぐ!?)
 体の芯に響くような痛みに必死に声を抑えたが、しかし龍子はすぐに蹴り足を脇に抱えて捕まえ、
 続けて桜井の左足も刈ってマットに倒す。
「よし、手筈通りいくぞっ!」
 味方に呼ばわりながら、龍子は仰向けの桜井の両足を脇に抱え、その場でゆっくりと振り回して回転を始めた。
「くっ!」
 徐々に回転に速度がつき、抵抗を諦めた桜井が着地に備えて両手で後頭部を覆ったあたりで、
 まずはコーナーから祐希子が出た。
「よ~~…し、と。そこっ!」
 じっくり回転のタイミングを見計らい、振り回されている桜井の側頭部目掛けてドロップキック。
 たまらずマットを転がった桜井に向かい、
「うきゅっ!」
 と、ソニックがスワンダイブから下を擦るような打点の低いドロップキックで追い打ち。
 さらに転がった桜井をニュートラルコーナーまで引き摺り、、
 龍子がコーナー下に座り込ませた桜井の喉元を足で踏んづけて動きを止める。
「ぐっ……!」
 足蹴にされながらも真っ直ぐに自分を睨み据えてくる桜井から視線を外すと、
 龍子は最後に真帆へ声をかけた。
「おうっ、押えてろ!」
 赤コーナーから飛んだ真帆が、ロープ一面分を丸々飛び越えてドロップキックを突き刺したあと、
 すぐに龍子は桜井をコーナーから引き出してカバーに入る。
 が、これは力強く跳ね返された。
「まだ、こんなことでッ!!」
 ダメージを感じさせることなく起き上がった桜井は、
 今度はわざと見え見えの右ミドルキックを取らせ、すぐさま残った左足で延髄斬りを放ってから、
 青コーナーから伸びていたみことの手に飛びついた。
「いきますっ!」
 みことはコーナーから飛び出した勢いのまま、ふらついている龍子をアッパー気味の掌底で打ち倒し、
 引き起こして頭を小脇に抱えながら自軍コーナーまで運ぶと、DDTで再びダウンさせる。
「先程のお返しをしましょう。準備を!」
 そう言うと、みことはうつ伏せの龍子の膝の裏に両足で乗り、膝から下を立った自分の足に絡めた。
 続けて、上から両脇を平手で叩く。
 思わずビクッと反応して脇を締めた龍子の両手を掴むと、それを引っ張って自分は背後に倒れ、
 さらに自分が背中をつけて下になり、逆に龍子を浮かせる。
 自然、龍子は両手両足を体の後ろ側に極められた状態で上を向かされる形になった。
 これだけで一つの関節技だが、もちろんまだ終わらない。
 天井を向いた龍子の視界に、赤コーナーの上に立っている桜井が見えた。
(まさか…!?)
 想像通り、無言のままコーナーを蹴った桜井が両足を揃え、無防備な龍子のどてっ腹に落ちてきた。
 必死で腹筋を固めようとしても、下のみことによって体の自由を奪われているため思うように力が入らない。
 歯を食いしばって痛みに耐えたところで、今度はコーナーの上に伊達が立った。
 伊達はこの連係をやり慣れているらしく、桜井のようにただ落ちてくるだけではなく、
 落下と同時に一旦縮めた体を龍子の上で思い切り伸ばし、蹴りつけるようにして腹を踏んでいった。
「ぐぅっ…!?」
 龍子は思わず呻いてしまったが、まだ一人残っている。
 最も体格のいい十六夜が落ちてきた時の痛みは、流石の龍子でも嫌な汗をかくほどだった。
 すぐに技を解いたみことが押さえ込んできたのはカウント2で凌いだものの、直後に龍子は場外にエスケープ。
 少しでも時間を稼いで回復したかったが、当然のことながら間を置かずにリングの中へ押し込まれた。
 交代しようにも、対角線上の赤コーナーは遠い。
 その上四人から囲まれている。
(ったく、どうしたもんかな…)
 龍子にとって、初めて経験する類の窮地が訪れた。

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by right-o | 2008-12-14 22:29 | 書き物