「不知火・改」 マイティ祐希子&ボンバー来島VSフォクシー真帆&ソニックキャット

 祐希子・来島ペアが初代のTNAタッグ王者になってから半年。
 この間毎月のように挑戦者を迎えながらも、
 二人は危なげ無く防衛回数を伸ばしていった。

 団体内ほぼ全てのタッグチームに勝利してきた二人が今回迎え撃つのは、フォクシー真帆・ソニックキャット組。
 なかなか面倒な相手ではある。
 両方とも感覚だけで動いているようなところがあって読みづらい上に、
 それでも互いにはどこか本能で通じ合うのか、コンビネーションは妙に良い。
 一緒にいる時でも試合の話など一切せず、
 ひたすら何かを食べているか食べる話をしているだけの二人だったが、
 「自分の食欲についてこれるのコイツだけ」という意味で、当人達としては深いところで認め合っているのかも知れない。

 試合は、挑戦者組の雰囲気に乗せられたのか、タイトルマッチながらもどこか明るい立ち上がりで始まった。
 ゴングが鳴ってすぐ、場外に出した祐希子目掛けてソニックがケブラーダで飛ぶと、
 この場外へのムーンサルトを前方に潜って避けた祐希子が、着地したソニックに向けてすぐさま同じ技で反撃。
「いっくぞー!!」
 と、コーナーから出てきた真帆が、これに続いて祐希子へトペ・スイシーダ。
 リングには来島が一人残された。
 当然の流れとして、客席から来島コールが沸き起こる。
「お、俺もかよ……」
 言いながら、とりあえずコーナーから出て来ざるを得ない。
 暫く迷っていたが、場外の真帆とソニックが立ち上がったのを見て来島も覚悟を決めた。
「うりゃああッ!!」
 助走をつけてトップロープの上を跳び越すプランチャ・スイシーダ。
 大柄な来島の体が降ってくる様子は迫力があり、飛行姿勢も意外に綺麗だったが、
「え、ちょっ…!?」
 初めて挑戦する空中殺法に気を取られるあまり、
 落下地点で、対戦相手と並んで立ち上がりつつあった自分のパートナーのことを忘れてしまっていた。
 
 そんな緩い流れも終盤になってくると引き締まり、次第に息詰まる展開を見せ始める。
 終盤には二組四人それぞれの必殺技が出揃ったが、互いにカットし合って決まらない。
 リング上で四人入り乱れて争われる中、
 試合権利のある祐希子とソニックがもつれ合って場外へ落ち、
 ここで一旦、タッチを無視して出てきた来島と真帆の戦いになった。
「ぃやッ!」
 ロープへ走って二度目のナパームラリアットを狙った来島を、
 真帆がカウンターのフランケンシュタイナーで返そうとする。
 が、来島が更にこれを持ち堪えた。
「よっ!と」
 自分の首に両足を掛けてぶら下がった真帆を力任せに引き上げ、パワーボムの体勢。
「恵理っ!」
 そこへ背後から声がかかると、来島はそのままの姿勢でパートナーを待った。
 直後、ソニックを振り払った祐希子がトップロープを踏み台にして跳躍。
 抱え上げられた真帆へスワンダイブ式のドロップキックを突き刺し、同時に来島がパワーボムを合わせる。
 ダブルインパクトを発展させた応用技だ。
「うあッ!?」
 これで大ダメージを負わせた真帆を場外へ追いやると、
 今度はちょうど良く上がってきたソニックを捕まえ、王者組はついに幕引きにかかった。
 前から祐希子のトラースキックを入れてふらつかせたところで、
 来島が背後から肩車で持ち上げ、正調のダブルインパクトを狙う。
(これはちょっとヤバイのさね……!)
 といって担がれたソニックは、どこにも逃げようがない。
「決めろ祐希子!」
「オッケー!」
 しかし、祐希子がロープを踏み切った瞬間、ソニックが閃いた。
 そして閃いた瞬間から、何も考えずに体が反応していた。
 正面から飛びかかって来る祐希子の右腕に対し仰け反って受け流しつつ、
 逆に祐希子の首に自分の右腕を巻きつける。
 次いで来島がソニックの足を跳ね上げて背後への落下を促す力を利用し、
 祐希子と同体のまま後ろに一回転。
 こうすることで、まんまと祐希子を下に敷く形でマットへ落ちることに成功した。
「よっしゃぁー!!」
 自分の直上で起こった一瞬の逆転劇に、来島は全く気づけない。
 真後ろで数えられた3カウントを、振り向かずに両手を上げて喜んでしまった。


「うきゅー!勝った、勝ったお!!」
「へ?か、勝ったのか!?」
 突然降って湧いたかのような勝利に、真帆とソニックは抱き合ったまま転げまわって喜んだ。
 そんな勝者達の声を背中で受けつつ、ひっそりと帰っていく来島の姿は、試合前より随分と縮んで見える。
「ま、まあ、ベルトはまた取り返せばいいんだからさ!」
「ダメだ…立ち直れねぇ……」
 勝負は最後の最後までわからない。
 この使い古された文句を、来島はこれ以上無い形で理解させられてしまった。

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by right-o | 2008-11-26 22:56 | 書き物