TNA リプレイ 4年目9月~10月 「バウンドフォーグローリー」

「う~ん…やっぱり、こっちは『新女』の名前が入っているベルトですので…」
「しかしなあ、今時『アジア」』というのも志が低くないか?」
 十月シリーズを控えたこの日、霧子は珍しく社長室に来ていた。
 ある案件について、社長と相談するためである。

 事の発端は去年の十一月、当時TNAにはタッグタイトルが無く、
 また自前で設立する余裕も無かったことから、
 社長はこれを手に入れるために、新女と提携していたAACに目をつけた。
 この時AACには新女からNJWPタッグとアジアタッグのベルトが流出しており、
 AACタッグと併せてチョチョカラス&ジョーカーレディ組が三冠を独占していたのだった。
 そして新女からAACの契約を奪った社長は、
 GM霧子に命じて、一シリーズに三つ同時、それも連戦で上に挙げたタッグタイトルマッチを強引に組ませ、
 挑戦者組としてエースの龍子と、それぞれベルトごとに違うパートナーをタッグにして挑ませた。
 社長の思惑では、どれか一つ取ることができれば十分だったのだが、
 結果として龍子と真帆が組んで挑んだNJWPと、
 祐希子が組んで挑んだアジアタッグの二つを同時に取ることができた。
 が、すぐに片方は余分だということがわかる。
 当たり前のこととして、それぞれ別に防衛戦を組まなければならないが、
 どちらのタッグにも龍子が入っているために日程の調整が難しい。
 加えてまだ団体内に定着したタッグチームが多く無いために、
 自然両方のタイトルに同じチームが挑戦しなければならなくなり、
 同じような顔合わせの試合が続いて新鮮味が無くなる。
 そういうわけで、どちらか片方を返上しよう、という相談をしに、
 霧子は社長室までやって来たのだった。

 社長も霧子も、正直なところどっちでもよかった。
 そのせいで、逆に決まらない。
 それで結局、
「本人達に決めてもらったらどうかな」
 ということになった。
「それが嫌だから相談に来たんじゃないですか」
 とは、霧子は口に出して言えなかった。
 本人達に言えば、どう考えても揉めることは明らかである。

 案の定、揉めた。
「このベルトは真帆のものだぞ!」
「こっちのベルトだって私のものよ!」
 シリーズの開幕戦、リング上に二つのベルトに関わる三人のレスラーを集め、
 どちらか返上しなければならない旨を告げたところ、
 真帆と祐希子は互いに自分は嫌だと譲らず、そっちが返上しろと主張し始めた。
 当然の反応ではある。
 しかし、その二人の真ん中に立ってじっと腕を組んでいた龍子の一言が、
 困り顔をしていた霧子を救った。
「強い方を残す」
 と言い出したのだ。
「二人で勝負して、勝った方のベルトはそのまま。
 負けた方と私が持ってるベルトは返上する。それでいいんじゃないか?」
「いいわよ!」
「わかったぞ!」
 そういう次第で、話が纏まってしまった。
「っていうか、普通こういうのってGMが思いついて提示するものなんじゃないの?」
 という龍子の一言は、未だGMという仕事の勝手がわからない部分のある霧子にとって痛かったが。 

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by right-o | 2008-11-13 21:10 | 書き物