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「ジャンボスープレックス」 フレイア鏡VS神楽紫苑

 リング上で、二十歳を迎えた真帆の誕生日が祝われたりした後、
 メインでは相変わらずここ一番での勝負弱さを発揮した市ヶ谷がプラズマサンダーボムで撃砕され、
 TNA二度目のPPVもなかなかの盛況の内に幕を閉じることになる。
 そんな中、件の試合はセミに行われた。


 この二人、体格は一回り鏡の方が大きいが、
 腕力は神楽の方が勝っている。
 試合は、そんな神楽の力技を巧みに切り返しつつ、鏡が優勢に進めていった。
「このッ!」
 イライラを募らせた神楽が闇雲に突っ込んで来たところをひらりとかわし、
 鏡はレフェリーと神楽を交錯させる。
 そして両者が立ち直るまでのわずかな間に、
 コーナーポストのカバーを外してターンバックルを露出させた。
 続いて立ち上がりかけの神楽の腹部に膝を入れてから、
 頭を掴み、それへ向かって一撃。
「痛ッ!」
 額を金具に打ちつけられ、神楽は流血。
 鏡はそのまま、ロープ際なのも構わず神楽に絡みついてコブラツイストに捕えた。
「うふっ、もっと近くで顔を見せて…」
 そうして背後で鏡が身を捩る度に、神楽の体が捻れて悲鳴をあげる。
 その苦痛に歪む神楽の表情を舐めるように、鏡はじっ、と赤味がさした顔を近づけた。
「くっ……!」
 神楽はとっくにロープを掴んでいるのだが、鏡は一向に技を解こうとしない。
 堪り兼ねたレフェリーが反則カウントを数えても、
 始めから勝敗に拘りが無いのか、全く動じる気配が無かった。
「うふふ、これはどうかしら」
 どころか、鏡はさらに卍固めに移行しようと片足を上げて神楽の頭を引っ掛けにいく。
 が、これが仇になった。
「離れろ、この変態!」」 
「きゃっ!」
 拘束が緩んだところを見計らい、神楽が前方にアームホイップで投げ捨てた。
 続けてすぐに鏡を引き起こし、腰の痛みに耐えながら、その頭を両足で挟んでパワーボムの体勢を作ると、
「はぁッ!」
 腰に両腕を回して、そのまま投げっ放しジャーマンの要領で背後に放り投げる。
 勢い、鏡の体は前方に回転させられ、俯いていた頭が強制的に起こされることになった。
 この後、普通なら顔面からマットに叩きつけられるところが、
 神楽がわざと、すぐ後ろにコーナーを背負った状態でこの技を仕掛けたせいで、
 鏡は自分が露出させたターンバックルで思い切り頭を打つことになった。
「うぐっ!!」
 流血こそしなかったものの、鏡は足元も覚束ないほどふらふらしている。
 そんな鏡を肩の上に掬い上げ、神楽は、見せしめのようにしてわざとリング中央まで持っていった。
「生憎と、この勝負はあたしの勝ちみたいねっ」
 ゆっくりと一回りして客席に見せつけてから、神楽のデスバレーボムが決まった。


「あたしを怒らせたら、恐いのよぉ?」
「くっ……!」
 勝者の余裕でニヤニヤ笑っている神楽に見下ろされ、
 鏡は珍しく歯噛みして悔しがっている。
 この二人に市ヶ谷を加えた三人の女王様は、
 それぞれどこか似ているものがありながら、
 それぞれまた違った部分で「濃い」個性を持っていた。

by right-o | 2008-11-11 22:55 | 書き物