「619」「SSD」 ソニックキャットVSコリィ・スナイパー

『Holla!If ya' hear me!!』
 「聞こえたら叫べ!」という意味の言葉と共にサイレンの音が鳴り響き、
 場内が赤い照明で照らされる中、コリィ・スナイパーが姿を現した。
 WWCAジュニアのベルトを肩に掛け、物怖じしない如何にも気の強そうな表情を浮かべて花道を歩いてくると、
 そのまま六角形のリングの中へ躊躇わず足を踏み入れる。
 コリィは、TNAにとってAAC勢を失って余りある存在だった。
 理由はもちろんその人気と実力もさることながら、彼女がジュニアクラスであるということが大きい。 
 TNAは、ソニックキャットというこれまた人気と実力を兼ね備えたジュニア選手を持ちながら、
 この抗争相手に恵まれなかった。
 AACのジュニア勢では相手にならないため、同階級の新人である小川ひかるの成長を待ってしか
 ジュニア戦線を盛り上げることができなかったところへ、
 ソニックのライバル役としては打ってつけと思えるコリィを獲得することができたのである。
 もっとも、当の本人達はそんな思惑は知らず、二人揃って六角形の対角で客席に向かって笑顔でアピールしている。


 両者とも体格に似合わないパワーとジュニアらしいスピードの持ち主であったが、
 試合が進むにつれて、コリィには切れ味鋭い投げ技、ソニックには奇抜な飛び技という相違点がはっきりしてきた。
 そして、その違いは試合のラストで一番顕著に現れる。
「うっきゅ!?」
 ソニックをマットに叩きつけると、コリィは位置を測って一気にコーナーへ飛び上がった。
「これで消えてねっ!」
 ふわり、と宙を舞う滞空時間の長いムーンサルトプレス。
 コリィの得意技の一つだが、これはソニックが転がって回避した。
 そのままロープ際まで転がって立ち上がると、コリィを両手で手招きする。
「オニさんこちら、なのさね!」
「むっ!こんのぉ~!」
 ムキになって追いかけて来たコリィに対し、寝転ぶようにしてかわすと同時に両足で左の足元を挟みこみ、
 ドロップトーホールドで前方に倒れ込ませた。
 すると勢い余ったコリィはトップロープとセカンドロープの間に突っ込み、
 ちょうど首をセカンドロープの上に打ちつける形になる。
「うっぐ!?」
 喉を強打し、暫くそのままの姿勢で動けずにいるコリィに対して、
 ソニックは反対側のロープで勢いをつけて跳ね返って来ると、
 背中を向けて座り込んでいるコリィの右側から、
 トップロープを右手、セカンドロープを左手で掴みつつ上下ロープの間に下半身を差し入れて場外に出し、
 くるりと半回転させてロープにもたれ掛かるコリィの顔面を両足で蹴りつけた。
 元は「フィンタ・デ・レギレテ」というルチャのフェイント技を、
 攻撃にアレンジした奇策である。
「いっくおー!!」
 予期しないところで顔面を蹴られ、吹き飛んだコリィがリング中央で立ち直るのを待ち、
 さらにソニックはトップロープを蹴って追い討ち。
 スワンダイブ式のウラカンラナで完璧に固めたかに見えたが、
 カウント3直前でコリィが跳ね返した。
「…ふぅ!危ない危ない」
「うきゅ~!惜しかったお…」
 が、ソニックに悔しがっている暇は無い。
 立ち上がった瞬間には、既にコリィの両腕が正面から回っていた。
 そのまま物凄い角度のフロントスープレックスでマットに叩きつけられ、
 なんとか立ち上がったところへさらにもう一発。
「今度こそ、ロックオンしたんだから!」
 ふらふらのソニックを引き起こしてコリィはブレーンバスターの体勢に。
 そして一息で頂点まで持ち上げ、ゆっくりとソニックの体を裏表逆に反転させる。
「やッ!!」
 そこから一気に開脚して尻餅をつくと、ソニックの体は辛うじてコリィの左手が後頭部に添えられているだけで、
 比喩や誇張抜きの“垂直に”頭からマットへ突き刺さった。


「うっきゅ~………」
 試合後、目を回したままのソニックを他所に、
 コリィはもう次の照準に狙いを定めている。
「折角この団体へ来たからには、もちろん一番大きなベルトを頂くわよ!」
 そう宣言するコリィに、観客も声援で後押ししていた。    

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by right-o | 2008-11-10 22:53 | 書き物