TNA リプレイ? 2年目3月

 旗揚げ二年目も終わろうかという三月末日。
 霧子が昨年から感じ始めた気苦労は、段々と大きくなっていくようであった。

「納得できませんわ!どうしてこの私に負けたはずの真帆が、リーグ戦優勝ですの!?」
「だからさぁ~、合わないんだってば。わたしとあの子じゃ」
 大概の苦情にはもう慣れたつもりの霧子だったが、一時に二人で来られると流石に鬱陶しい。
 机の上に身を乗り出して唾を飛ばしている市ヶ谷の隣で、
 神楽紫苑が頬杖をついて気だるそうに喋っている。
 市ヶ谷は言うまでもないが、こちらも中々の要注意人物だった。
 この一年、団体で起きた二つの遺恨の両方とも、神楽が原因となっている。
「大体、私が力を発揮できないリーグ戦など何の意味もありませんわ!
 あれは無かったことにすると、即刻マスコミ各社に通達なさい」
「だってあの子、寝る直前までダンベル振り回してるんだよ?
 同部屋じゃ暑苦しく寝られやしないんだってば」
 双方、隣にいる人間がまるで見えていないかのように、ひたすら自分の主張だけを喋り続けている。
 それに対して、霧子としては両方へ曖昧な微笑を送りつつ黙って聞いているしかない。
 喋るだけ喋ってすぐに帰るかと思ったが、どちらも今日はしつこかった。
 そこへ突然、バーンと大きな音を立てて部屋のドアが内側に開け放たれる。
 この入室方法に慣れきってしまった霧子は、もう驚きもしない。
「おい!ウチにベルトができるって本当なのか!?」
 来島だった。
 市ヶ谷は相変わらず脇目もふらないで喋り続けていたが、
 神楽の方は話題にしていた当人が登場したのを受け、「げっ」と言って黙った。
「それでこの前のリーグ戦は、龍子と初代王者決定戦を争うヤツを決めるためのものだったって…」
「…何ですって!?」
 ようやく市ヶ谷の耳にも他人の声が届いたらしい。
「いや別に、そんなこと社長からは一言も…」
「あ、真帆それ聞いたぞ。この前社長が言ってた」
 不意に、特別用もなく、それまで部屋の隅でもくもくとメロンパンを食べていた真帆が声をあげた。
「…は?」
 とぼけたのではなく、霧子は本当に社長から何も聞いていない。
「かーッ、マジかよ!それを言ってくれりゃもう少し気合も乗って試合できたのに!!」
「そうですわ!公平のために、来月もう一度やり直しなさい!!」
「いやもうベルトとかどうでもいいからさぁ、早く寮の部屋割変えてよ」
(はあ……)
 最近、溜息を吐かない日があったろうか。
 そんなことを考えながら、GM霧子の二年目は終わった。

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by right-o | 2008-11-07 22:53 | 書き物